往復書簡2012~第1部 ―vol.2
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往復書簡2012~第1部―vol.2
~在日朝鮮人とパレスチナ
岡真理 ●京都大学大学院人間・環境学研究科教授
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李英哲 ●朝鮮大学校外国語学部准教授
テロルとしての文学
岡真理
李英哲さんへ
お返事ありがとうございます。パレスチナ難民の姿に日本人が心を痛めること。悲惨を被る他者の姿に触れ、内臓が痛みに引き攣ることは、人間であることの証しであり可能性です。でも、同時に、何が彼らにその悲惨をもたらしたのか、その根源がつねに、批判的に問われなければ、その共感は温情にとどまり、状況変革のための真の応答可能性へ、真の連帯へと開かれることもないでしょう(思想の力とは、この根源に自らを繋留する力のことだと思います)。
他者と出会いなおす「希望」としての文学
李英哲
岡真理さんへ
岡先生。こうしてお手紙を交わしているさなか、朝鮮は最高指導者の急逝という衝撃的な出来事に見舞われました。脱植民地化と自律的発展を分断と戦争によって阻まれ続けながら、独自の社会主義を掲げ特に近年困難な道を歩んできた朝鮮は、まさしく「武器をもって闘うことなくして自由と尊厳を奪い返すことはできなかった」。その政治文化は、帝国主義への集団的抵抗を実現し続け、徹底的に否定され貶められ続けた生を徹底して肯定的に生きなおすために必要とされる、朝鮮人民の尊厳、自尊感情の拠り所だと私は考えます。