【特別企画】日本のヘイト・クライムを考える
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ヘイト・クライム(憎悪犯罪)とは「人種、民族、宗教などに対する偏見・差別を動機とする犯罪」とされる。在特会(在日特権を許さない市民の会)に代表される日本の一部の団体が、朝鮮学校を襲撃し「嫌韓デモ」を繰り返す。「朝鮮人を殺せ!」と殺意をむき出しにする。それはまさにヘイト・クライムそのものだ。問題なのは、一部の人たちのそのような行動よりも、それを容認しそれを生み出した日本社会のあり方である。「高校無償化」から朝鮮学校だけが排除され続けている現状と根っこを同じくするものだ。 日本のヘイト・クライムを考える。
新大久保から鶴橋まで、 排外デモに対峙する人々に出会う
李信恵●ライター
3連休の初日である2月9日に、東京・新大久保で「新社会運動」主催、「在特会(在日特権を許さない市民の会)」協賛での反韓デモが行われた。旧正月を控えたこの日から、これまでの反韓デモの流れを変えるような出来事が始まった。
ヘイトクライム処罰は世界の常識
「表現の自由」口実に排外主義容認する日本政府
前田朗 ●東京造形大学教授
差別と排外主義が日本を覆い尽くした感がある。 在特会(在日特権を許さない市民の会)に代表される自称「市民」が激烈な差別行動に出ている。社会における差別を助長しているのは、日本政府である。高校無償化から朝鮮学校を除外する差別が堂々と語られ、数年がかりで強行されている。これは差別の煽動である。「朝鮮人は差別してもいいんだ」と、日本政府が「差別のライセンス」を発行している。在特会は大喜びで差別に励む。2009年の京都朝鮮学校襲撃事件、2012年のロート製薬強要事件など、陰湿で卑劣な差別と排外主義がまかり通っている。
レイシズムの波がゆっくりと動き出している
排外主義へと回収される愛国心と被害者意識
安田浩一●ジャーナリスト
ゆっくり通り過ぎる隊列を目で追った。
「朝鮮人を殺せ!」「叩き出せ!」「追い出せ!」
聞くに堪えない罵声が、怒声が、耳に飛び込んでくる。
吐き気を覚えた。背中の筋肉が強張った。 2月9日、新大久保(東京都新宿区)。
いまや〝恒例”ともなった「反韓デモ」には約150人が参加。それぞれが日章旗を打ち振りながら、コリアンタウンを練り歩いた。