栃木朝鮮初中級学校
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栃木朝鮮初中級学校
創立:1957年4月8日/児童・生徒32人/16世帯/学区:栃木県/交通:JR小山駅から車で約15分
子どもたちには楽しみを、保護者には安心を
2013年12月7日。いちょうの落葉が絨毯のように敷きつめられた栃木朝鮮初中級学校では、朝からオモニたちが大忙しだった。食堂では給食用のピラフ、から揚げ、わかめスープ作りに精を出し、音楽室ではヘグムミニコンサートのため、色とりどりの風船や折り紙で会場の飾りつけに取りかかる。
そして、給食を終えた午後2時。オモニ会が女性同盟栃木、オリニサークル「アルム」とともに主催した「ヘグム・ミニコンサート」では、東京からやってきたヘグム奏者―河明樹、尹慧瓊さんが「モランボン」「チョンダリ」「アリラン」などを演奏し、ヘグムの魅力をたっぷりと届けてくれた。河さんは「いつも歌っている曲がどのように変わるのか、聞いてみてください」と最後は、世代を超えて愛される「ワンホバク」をチャンゴの軽快なリズムを加えながら聴かせる。ウリ音楽の「フン(興)」に乗る子どもたち、傍で見守るオンマたちも合唱に加わり、コンサートはクライマックスへ。
児童・生徒数32人、16世帯の栃木初中には昨春、2人の新任教員が赴任してきた。もちろん、親元を離れての教員生活。7人の教員と3人の講師を見守るのも「自分たちの仕事」と、オモニ会では毎週土曜日に交代制で教員たちの昼食を作っている。「大きなお金を作ることはできないけれど、せめて通っている子どもたちやオモニたちが安心できるような環境を作りたい。そのためには、先生たちが置かれた環境がよくならないと。お腹をすかせたり、寒い思いはさせたくない」とオモニ会会長の李由和さん(43)は話す。
大都市に比べて生徒数が少ないのが地方学校の悩みだ。クラス一人では通わせられないと、泣く泣く他県へ引っ越す家族、日本学校へと進路を変える家族…。教室から一人いなくなることの「重さ」は大都市の比にならない。だからこそ、「一人ひとりを大事に」との栃木ハップモ(保護者)の思いは強い。「セッピョル学園」は北関東・東北・北海道にあるウリハッキョの子どもたちがチングを増やすイベントとして好評を博し、5年間続けられているが、栃木ハッキョも一役買っている。2011年の東日本大震災時に茨城での開催が難しくなった時、会場の名乗りを上げ見事成功させたのだ。「栃木のアボジオモニはもちろん、他県からもハッキョを掃除に来てくれた。集まった子どもたちの姿は、これからもずっと一緒に過ごしてほしいと思うくらい感動的だった。セッピョルをきっかけに東北、新潟、茨城、群馬、福島の親同士も交流できるようになり、互いに『手伝って』と声をかけられるようになったのもよかった」(当時・会長だった高恭子さん、44)。
6年前にアボジ会も生まれ、多忙な教員たちが手の回らない草むしりや学校清掃など地道な活動に熱心に取り組んでいる。同校は09年から学芸会を「同胞文化祭」と衣替え、地元の同胞たちも一緒に舞台に立っているのだが、アボジ会は仕事を終えた夜10時から歌を練習するほど熱心だ。子どもたちを温かく見守る人たちが創立56年目の栃木初中を支えている。