同胞たちの強い意志が響いていました
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三月十七日に、福島朝鮮初中級学校を訪問した時のことを書きます。
校長室で金政洙校長先生とお話ししているうちに給食の時間になり、わたしたちは食堂に移動しました。
ちょうど、八人の先生と十一人の生徒が一堂に会して、ハヤシライスとサラダとリンゴという献立の給食を食べようとしているところでした。
わたしは、食器にごはんとハヤシライスをよそって、「アンニョンハシミカ」と、六年生の女子生徒二人と担任の金姫順先生の席に座りました。
「アンニョンハセヨ」彼女たちは、少し訝しげにわたしの顔を見ました。
「六年生というと、二人は、卒業?」
「はい」と答えたのは、大きな黒い目が印象的な少女でした。
「午後は何の授業なんですか?」わたしは金姫順先生に訊ねました。
「習字です。習字は週に一度、毎週月曜日なんです。あと、卒業アルバムを作ったり、ね」
彼女たちは黙っていました。
「二人きりの卒業アルバムだと、二人のページがたくさんあっていいですね」
わたしは、今度訪ねる時は、授業や放課後もいっしょに過ごし、彼女たちと打ち解けて話をしたいな、と思いました。
リュウ・ミリ●作家
1968年生まれ。神奈川県出身。鎌倉市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を訪問。近著に「自殺の国」がある。