韓国映画と現代史
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他の表現方法同様、映画もまた時代や社会状況に左右されます。韓国では長く、政権による圧力や分断状況の中で、映画制作は大きな制約を受け多くのタブーが存在し続けました。しかし、そんな中でも歴史の事実を明らかにしようとする作り手たちがタブーを打ち破る作品を発表してきました。特集では、そんな作品を紹介しながら、韓国の現代史の出来事や社会の変化を見てみたいと思います。
時代を描いた韓国映画10選
韓国社会の変化の中で、長くタブーとされてきた、済州島4.3事件や光州人民抗争、分断による悲劇や独裁政権の暗部などを果敢に描いた作品群があり、日本でも公開されてきました。そんな社会派映画のなかから10作品を紹介します。
●『ペパーミント・キャンディ』(박하사탕)/個人史から紐解く韓国現代史の闇
●『シルミド』(실미도)/闇にあった工作活動の真相は
●『大統領の理髪師』(효자동 이발사)/軍事独裁時代に生きた理髪師
●『トンマッコルへようこそ』(웰컴 투 동막골)/民族分断の悲しみと統一への祈念
●『光州5.18』(화려한 휴가)/史上初、光州人民抗争を完全映画化
●『チスル』(지슬)/1948年4月、済州島で何があったのか
●『高地戦』(고지전)/歴史から消された悲劇の12時間
●『肝っ玉家族』(간큰 가족)/離散家族の悲劇をコメディで描く
●『ホワイト・バッジ』(하얀 전쟁)/韓国軍のベトナム派兵を問う
●『受取人不明』(수취인불명)/「基地村」に生きる人々
安聖基が語る「風吹く良き日」
「この映画が私自身の方向性を決定付けた」
現在、韓国映画界の第一人者で、「風吹く良き日」で主役・トッペ役を演じた安聖基さんに作品について話を聞いた。
痛みと向き合い、社会と対話する
インタビュー/鄭智泳監督に聞く
国家権力の暗部や社会問題を鋭くえぐる作品を発表してきた韓国きっての社会派監督・鄭智泳。このたび、「南営洞1985」(2012年韓国公開)と「南部軍」(1990年公開)の日本上映に合わせて来日した鄭監督に両作品のこと、映画と社会の関わり方などについて話を聞いた。
現実を描き、現実に立ち向かう映画
金友子●立命館大学嘱託講師
検閲と社会の暗闇
映画の面白さをどこに見出すかは人によって違うだろうが、韓国映画のもつ魅力の一つとして、リアリズムをあげることができるだろう。韓国映画に映画としての重みや骨太さを感じることができるのは、やはり社会の暗く厳しい現実をきちんと映画に描き込んでいるからである。
韓国社会の今とドキュメンタリー、闘いと記憶
芳賀恵●映画ライター・北海道大学非常勤講師
韓国では昨年から今年にかけて、権力を批判するドキュメンタリーが相次いで発表され、話題となった。2010年3月に黄海沖で起こった哨戒艦沈没事故の原因に関する政府発表に異議を申し立てる『天安艦プロジェクト』(ペク・スンウ監督、2013)や、巨大企業の労災問題をめぐる遺族の闘いを記録した『貪欲の帝国』(ホン・リギョン監督、12)などである。こうした映画が次々に生まれる背景には、いったい何があるのだろうか。