日本人が知らないこと、知りたくないこと
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わたしは折に触れて『世紀の遺書』という本を読んでいます。
第二次世界大戦で戦犯として裁かれ刑死した「日本軍兵士」の遺書を編纂したものです。巻末には、遺書を書いたひとの姓名、出身地の都道府県、軍隊での階級、裁判国、死亡した場所・日付・年齢、死因(死刑を執行された場合は銃殺か絞殺、未執行の場合は病死か自殺)が掲載されています。五十音順なのですが、植民地出身者は[鮮(朝鮮)][台(台湾)]としてまとめられ、本名と日本名が併記されています。日本人の大半は年齢が記されていますが、彼ら四十五人は一人を除いて、年齢の欄は空白です。
彼らの遺書は日本語で書かれています。朝鮮語や中国語の遺書があったのかどうかはわかりません。
リュウ・ミリ●作家
1968年生まれ。神奈川県出身。鎌倉市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を訪問。近著に「自殺の国」がある。