痛ましい記憶を語る ということ
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記憶について考えています。
それを考えるに至ったのは、日本軍「慰安婦」の被害者は「実は、高収入だった。家族の借金返済のために慰安婦業務に応募した。補償金欲しさに、日本兵の残虐さを誇張した創作をしている」という言説が、日本では主流になりつつあるからです。
そのような言説を流布する側は、慰安所の場所が二転三転する、現在の年齡と連行されたとする年齡の辻褄が合わない、性行為を強要されたとする一日あたりの兵士の数が多過ぎて現実的には不可能などと被害者の記憶の曖昧さを、意図的な虚偽によるものだと決め付けています。
リュウ・ミリ●作家
1968年生まれ。神奈川県出身。福島県南相馬市在住。1993年、「魚の祭」で第37回岸田戯曲賞受賞。1997年、「家族シネマ」で第116回芥川賞受賞。2008年10月、朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。近著に小説「JR上野駅公園口」(河出書房新社)、「貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記」(双葉社)がある。