【特集】「モノつくる人々」
広告
近年、日本の「ものづくり」の現場にあらためて注目が集まっています。在日朝鮮人も古くから靴やカバン製造、プラスチック成型など多種多様な仕事につきながら、日本の製造業の現場を下支えしてきました。本特集では、確かな技術力で不景気の荒波を乗り越える町工場、伝統を受け継ぐ職人など製造業に従事する同胞たちにスポットを当てました。ものづくりに対するこだわりとプライド、競争を勝ち抜くノウハウ、事業継承のポイントにも迫ります。
●01 職人の「目」が高品質を支える
吉田加工所 姜益原さん(67、皮革裁断)
姜さんが生業にしている皮革裁断とは、バッグなどの皮革製品用になめした皮を完成品のパーツの形に合わせて切り取る作業のこと。
皮革裁断には、製品の型紙(革製品のパーツごとのサイズ・形状をなしたもの)を使ってナイフなどで手裁ちするやり方や、型紙に合わせた金刃の抜き型を用いてプレスで裁断するやり方などがあるが、吉田加工所は後者だ。仕事は革バッグ(男・女)や小物類のパーツの裁断。現在の仕事のメインであるバッグは、聞けば誰もが知っている若い女性向けの有名ブランドのものだ。
●02 常に一歩先ゆく発想と技術を
権勇圭さん(67、西陣織)
繊細で美しい柄と質感を持つ西陣織。権勇圭さんがつくる西陣織の帯は同業者の中でも評価が高く、値段もなかなかのもの。「良いものをつくる能力があるなら、こだわりを持ってつくりたい。数が売れない時代だからこそ、好景気の時代には手が回らなかった部分までこだわって、いい商品を手がけていきたい」。ものづくりに妥協しない、それは自身のアボジ・重燮さんから受け継いだプライドだ。
●確かな技術力と顧客への対応力が武器
明和化学工業所 朴永吉さん(74、プラスチック射出成型)
電子部品や建設部品、その他ファンシー商品からビーカーのキャップまで、幅広いプラスチック製品を手がけている明和化学工業所。1968年に創業、その後、社長の朴永吉さんと妻の権和子さん(70)が二人三脚で続けてきた。現在は次男の朴金守さん(45)も家業に入り、家族で経営している。
●世の中にないものを作り、届ける―
アジア・ラゲージ 金村徳厚社長に聞く
人間の五感で感じるものづくり、素材や部材へのこだわり…。国際的に通用する「日本の伝統品質」をモットーにスーツケースを作り続けるA.L.Iブランド、アジア・ラゲージは、業界の常識を塗りかえる商品でヒットを飛ばしている。CEOの金村徳厚さんに話を聞いた。
かねむら・とくあつ●1965年東京都生まれ。東京朝高卒、私立大学を卒業後、不動産業、カバン卸売会社を経て、2003年アジア・ラゲージを起業。同社のアイテムは3000品目を越える。製造拠点は中国で、アジア、オーストラリアを中心に販売を展開している。
聞き手:康明逸さん(朝鮮大学校助教)
●日本の製造業を支えた在日の技術
ものづくりのまち・東大阪を歩く
中小企業の集積地である東大阪市は「ものづくりのまち」として全国的に有名だ。技術力の高さに加え、短納期、多品種・小量生産を強みとし、協力工場のネットワークを活用した試作品、特注品も得意とする。そんな東大阪市で町工場を営む同胞たちを訪ねてみた。
●同胞製造業の開拓と継承問題
康明逸●朝鮮大学校経営学部助教
現存する同胞製造業のほとんどは、その熾烈な技術競争を勝ち抜いて存続する優良企業であり、そこに蓄積された製造技術とノウハウの水準は世界的なものである。わたしたちはこの点により高い関心を向けるべきである。