【特別企画】思考のレッスン― 制裁 に抗う
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このたび日本政府は朝鮮民主主義人民共和国に対する独自の制裁措置の強化を打ち出した。政治、メディア、世論一体となった排外的な空気が醸成され、在日朝鮮人の権利がますます侵害されようとしている。逆風の中でいま私たちには、制裁の実態と不当性を知り、そのロジックに大きな穴を穿つための思考を鍛え上げることが求められている。「制裁」の政治に抗うために―。
●日本政府の対朝鮮「制裁」 、何が問題か
「人的往来の規制」批判
鄭栄桓●明治学院大学准教授
日本政府は2月10日、朝鮮民主主義人民共和国の核実験の実施と人工衛星打ち上げをうけて、独自の「制裁」を追加することを発表した。2014年5月のストックホルム合意と朝鮮政府の拉致問題の調査開始をうけて、同年7月4日に政府は「制裁」を一部解除したが、今回これらの措置を復活させたうえ、さらにその対象を拡大した。ここでは「再入国許可」制度を用いた「人的往来の規制」を中心に「制裁」の問題点を指摘したい。
●ドキュメント・日本政府の対朝鮮独自「制裁」の変遷
日本政府の朝鮮に対する制裁はこれまでどのように展開されてきたのか、その内容はいかに変化してきたのか。2006年から現在までの主だった動きを時系列でまとめた。
●教えて!「北朝鮮ミサイル騒動」の本質
金里映●朝鮮新報
朝鮮民主主義人民共和国は2月7日、国産の地球観測衛星「光明星4」号を打ち上げた。しかし、アメリカ、日本、韓国は「長距離弾道ミサイル発射」であると非難し、「制裁」を決定。朝鮮に対する新たな制裁措置を盛り込んだ国連安全保障理事会(国連安保理)「決議」も採択される事態となった。これらの動きをめぐる本質は何なのか、Q&Aでまとめた。
●在日生活をよりよく生きるために
萎縮こそ禁物…
高演義●朝鮮大学校客員教授
先日、かつての教え子の結婚式に招かれ、恩師ということで祝辞を述べた。
いつもながら在日同胞の冠婚葬祭の場に行くとにぎやかで、独特な味わいが漂っている。何よりもそこに集まった人たちの活気、バイタリティーが、なんともいえない。
私はつい気が乗って、愛弟子(新婦)のことを持ち上げた。長くないスピーチだったが、ウリハッキョ、朝鮮大学校なしにこの日の幸せはありえなかったろう、などと話したようだ(朝大は二人にとっての母校。卒業後数年間にわたる社会活動の中で、とりわけ日本社会の厳しい風波に抗いながら結ばれた恋であった)。
ウリハッキョ。
同胞社会の喜びも悲しみも全部、源は私たちの学校にあると、今さらのように思う。
いつも私の胸を痛ませるひとつの思いがある。それは異国にあって子育てをする親御さんらの辛い気持ちのことである。何の補償/保障もなしに、わが生命の一部である子どもを育てあげることの辛さ……。
宴も、いよいよ終盤。あちこちでざわめきが起こる。定番のトンイルヨルチャ(統一列車)だ。祝賀の客のほとんどが、前の人の肩に手を置きながら式場をぐるり一周踊りまくるのだ。こんな民族って、ある? いたって単純素朴な光景であるが、心が和む。
このような慶事の場に招待されて、私の願いはただ一つ。同胞社会、特に若い人たちの世界がぐんと豊かになってくれればというその一念のみ。
※ ※ ※
満ち足りた気持ちで式場を出たとたん目に映ったのは、繁華街のビルの天辺の電光板ニュースのでかでかとした文字、「日本政府、北朝鮮に独自制裁。米中も国連でがっしり握手」
例の朝鮮の新型核実験と人工衛星発射をダシにした、特に日本側の痙攣的反応だった。別に驚かない。想定内。朝鮮が“こう”出ればきっと日本側は“ああ”するだろうなということが、近頃はあまりにも見えすぎちゃって困るくらい。