【特集】STOP! ヘイトスピーチ~共に生きる社会を目指して
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ヘイトスピーチが世に台頭してから、在日朝鮮人をはじめとする多くの人々が心に傷を負ってきた。これを日本社会全体の問題とする市民たちの行動によって、国もようやく法律の制定に向け、動き出した。差別をなくし、共に生きる社会をつくるため、ヘイトスピーチのある今の社会をもう一度見つめなおす。
●この国に差別はいらない~ヘイトデモへのカウンター行動を追って/矢部真太 ●23歳、フォトグラファー
「大人のみなさん信じています。差別をなくしてください。桜本を通さないで下さい」―。
川崎市川崎区桜本で中学生の少年がタオルで涙を拭いながら声を張り上げていた。そのすぐ足元では、カウンターたちが「奴らを通すな!」「差別に反対!」と声をあげ、両隣の人と腕をがっちり組み、レイシストが通れないようにシット・イン(座り込み)やダイ・イン(横たわり)をして壁を作る。歴史的経緯により戦前から在日朝鮮人が多く暮らした桜本で、そのルーツを持つ人たちがひどい差別にさらされている。・・・
●ヘイトスピーチとは何か― 差別煽動表現、マイノリティへの攻撃/師岡康子
ヘイトスピーチとは直訳すると「憎悪表現」だが、人を憎む表現一般と誤解を生じるので、私は「差別煽動表現」という訳を提案している。古くからある「差別表現」の問題であり、人種、民族、性別、障がいの有無などの属性におけるマイノリティに対する表現による攻撃であり、差別の一形態である。
●差別を許さない~抗する人々
日本でヘイトスピーチが根絶されないのは、人種差別撤廃条約を批准しながらも、人種差別を罰する法律がないからだ。すべての人が大切にされる社会を目指して法律制定に取り組む人たちを紹介する。
◇私の友人たちを守るため、人種差別禁止法の成立を/有田芳生参議院議員
◇京都襲撃から6年、高裁決定を生かす/金尚均さん ●47歳、龍谷大学教授
◇訴え続ける「共に生きよう」/崔江以子さん ●42歳、川崎市ふれあい館職員
●日本初の条例制定、市民の声が行政動かす ~「大阪市ヘイトスピーチ対処条例」を勝ちとるまで/文公輝(47歳、NPO法人多民族共生人権教育センター・事務局次長)
●希望を掴みだす「命の軋み」―/中村一成
差別のダメージの深刻さは当事者にしか分からない。差別される当事者には存在の危機であるヘイト・スピーチでも、非当事者には路上の反吐を見たり踏んだりした程度の「不快」で忘却可能な言動だったりする。このギャップを架橋する鍵は「想像力」である。「表現の自由」「濫用の危険」を繰り返す規制反対派、慎重派の言葉が軽薄なのは、この想像力が決定的に欠落しているからだ。