大阪・200回目の火曜日行動 / 「差別反対」訴え続けた4年間
広告
「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」(以下、「無償化連絡会・大阪」)が主管する、大阪府庁前での「火曜日行動」が6月21日に200回目を迎えた。この日、節目の200回に際して参加者たちによるデモ行進が行われた。「火曜日行動」は朝鮮学校への補助金再交付と無償化制度への適用を求めて2012年4月17日に始まり、これまで休むことなく続けられてきた。
朝鮮学校差別反対」「子どもたちに笑顔を!」―。大阪城公園教育塔広場には、大小さまざまなプラカードや横断幕、旗を持つ人々が集まった。朝鮮学校児童・生徒の保護者や同胞、日本の市民団体メンバーなどこの日の参加者は約300人。
デモ行進に先立って行われた集会では、「無償化連絡会・大阪」の長崎由美子事務局長ほか3人が発言した。「等しく学ぶ権利をすべての子どもたちに」という決意を改めて共有した参加者たちは、シュプレヒコールを上げながら大阪府庁を目指して歩き出した。
広場を出発したデモの列は、横断幕を掲げ、音楽を鳴らしながら進んでいく。「多くの人々はまだ朝鮮学校のことを知りません。しかしそこに通う子どもたちは、私たちと同じ市民です。子どもたちだけが政治の道具にされています」。長崎事務局長が先頭に立ち、マイクアピールをしながら道行く人々にも呼びかける。「抗議の声を可視化したい」というのが、「火曜日行動」が始まった当初からの思いだ。公園や街なかでは、足を止めて行進を見守る人の姿もあった。
「学ぶ権利を奪うな!」「朝鮮学校への補助金を復活せよ!」。府庁前に到着すると、怒りを含んだ抗議の声はいよいよ大きくなる。「子どもたちの未来を守ろう!」―参加者たちは一つになって、これまで叫び続けてきた思いを再び強く訴えた。
金愛美さん(49、中大阪朝鮮初級学校保護者)
この4年という歳月を1日のようにたたかっている日本の方々に感謝したい。私たちは差別されることに慣れすぎていたと思う。行政がどんな小さな声も拾ってくれると信じて、これからも声を上げ続けていきたい。気ぃつけや/アンタのことやで/その差別
金文子さん(47、生野朝鮮初級学校保護者)
同じ地域に住む者同士、仲良くできないのか? これからもこのたたかいは続くのだろうか? 私たちは差別されるほど一つになる。子どもたちに笑顔が戻らない限り、支持者を増やし、断固として抗議を続けていく。
●田中宏さん講演会/「朝鮮人って悪いことなん?」にどう答えるか
「無償化連絡会・大阪」では200回目の「火曜日行動」に先立つ6月11日、田中宏・一橋大学名誉教授の講演会(東成区民センター)を主催した。講演テーマは「子どもたちの問い『朝鮮人って悪いことなん?』にどう答えるか~高校無償化における朝鮮高校除外を考える視点について」。
田中名誉教授は、在日朝鮮人の民族教育の歴史をひもときながら、朝鮮学校の歴史は在日の権利闘争の歴史だと指摘。「高校無償化法」が「すべての学び」を対象としてスタートしたことを評価しつつも、朝鮮学校のみを除外した国の姿勢を厳しく批判した。また、敗戦後の日本があらゆる法令において諸権利を「国民」に限定するかたわら、納税に関する義務においては「居住者」と使い分けてきた方便が、昨今の高校無償化制度除外や補助金不支給に際しての整合性を欠いた不当な根拠にも通底していると指摘した。そのうえで、一連の朝鮮学校問題を普遍的人権を守る問題としてとらえるべき、などとのべた。 【無償化連絡会・大阪】
いよいよ大詰め、補助金裁判は最終弁論
大阪朝鮮学園が原告となり、大阪府・市の補助金不交付処分の取り消しを求めた裁判は、2012年9月の提訴から4年目を迎えている。4月19日(原告側)と25日(被告側)にそれぞれ証人尋問が行われた。次回8月9日の期日が最終弁論だ。
講演会では、いよいよ大詰めを迎える両裁判の現状報告もなされた。補助金裁判については、木下裕一弁護士が先日の証人尋問の詳細を報告。そもそも大阪府が政治的な目的で補助金交付要綱を改訂したこと自体が違法であり、それによって不交付決定がなされたことも違法だと主張した。8月9日の最終弁論の場では国際法、憲法などの条文、理念によって補助金交付の権利性を立証していくという。
無償化裁判について報告した李承現弁護士は、規程13条の要件を大阪朝鮮学園が満たすかどうかという点について、政治的理由により不指定処分を受けたことや、そもそも13条の法令に教育基本法16条(不当な支配)の是非が含まれないことから、大阪朝高が13条に適合するとのべた。さらに今後は、▼多くの証人尋問を申請し、当事者の生の声を法廷に届けること、▼教育法学者の意見書を提出し、被告側が主張する「不当な支配」論が矛盾していることを立証すること、▼裁判官による検証、もしくは映像視聴を通して朝高の真の姿を理解してもらう、という3つを提起していくという。
丹羽雅雄弁護団長は、本裁判は子どもたちの民族教育を受ける権利、普遍的人権を守る闘いであると同時に、レイシズムに抗う闘いでもあるとし、当事者・支援者・弁護団の「三位一体」で裁判を必ず勝ち抜こうと訴えた。