アボジサミット2016~学び、語り、パワーアップ!
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朝鮮学校を支援するアボジ会のパワーアップを目指した「関東アボジサミット2016」が8月28日、東京・荒川区の東京朝鮮第1初中級学校で行われ、東京、神奈川、埼玉、千葉、栃木、群馬などの朝鮮学校18校から約50人のアボジ会のメンバーが集まった。アボジ会は各地の学校で増えており、学校支援の様々な取り組みが生まれている。アボジたちの暑い夏を追った。
東京第9アボジ会、サランの会に学ぶ
無償化差別や補助金カットなど朝鮮学校を取り巻く厳しい状況は続くが、オモニ会同様、アボジ会は元気だ。学校の掃除や改修、さらには地域交流や教育権利を求める働きかけと支援の形は現実的でユニークなものが多い。今回、関東アボジサミットを呼びかけたのは東京第1初中のアボジ会で、3ヵ月間で関東一円のアボジたちをじかに訪ね、交流を重ねてきた。関東には20年の歴史を持つアボジ会もあれば、生まれて数年の会や準備中の学校もある。
第一部は、関東地方でも20年前から他に先んじる活動を続けている東京第9初級アボジ会、「サランの会」のメンバーの7人を講師に招き、経験談を学ぶことから始まった。
トップバッターは、東京第9アボジ会の第3代会長の金容星さん。会長をしていた2000年を前後する時期は、朝鮮半島をめぐる情勢が緊迫、通学時の子どもたちの安全を守る必要があり、地域の日本市民との交流、とくに近隣の杉並区立第1小学校や、馬橋小学校の「おやじ会」と顔の見える交流を重ねてきた。関東地方では先駆けて地域開放型のバザーを開催し、1000人の住民でにぎわったこと、区の後援を受けての演劇「さんねん峠」の上演、仲良しキャンプなど、大人の交流が子どもたちの豊かな出会いにつながったことも報告し注目を集めた。
杉並区では、2011年には第9ハッキョを支える日本の市民団体「サランの会」が生まれ、特別授業や給食、学校イベントのお手伝いといった支援を続けている。区議会議員や区の職員も名を連ね、スキーキャンプに同行したり、読み聞かせにも参加する広がりを見せている。「サランの会」事務局長の三木譲さん(49)は、「僕たちが見守っているから、安心して勉強して―。そんなメッセージを届けたい。学校の活動に自然と重なりながら、地域の仲間として何ができるのかを考えていきたい」と第9への思いを伝えた。
楽しく続く、アボジ会に~親睦、給食、プレミア体験
第2部は、この日のメインイベントとも言える各地のアボジの経験交流だ。7校のアボジ会代表が登壇し、各学校の取り組みを発表した。
「80メートル長さのキーンパプ」「マグロ解体ショー」など、奇抜な発想で注目を集める埼玉初中の李賢奎前アボジ会会長(46)は、補助金を止めている埼玉県への要請、夏休みの学童支援の一環としてのザリガニ釣り、生徒たちとの運動会と焼肉で学校を盛り上げてきたことを伝えた。創立55周年を迎える今年、「60周年に向けて、児童・生徒数の目標を300人に定めるなど大きな目標を立てて前へ進みたい」と語る。東京第4初中アボジ会の金竜基会長(44)は、「第4出身以外のアボジたちがハッキョに来ても、居場所がなく、溶け込めるような会にしたかった」として、4月の公開授業の日にオモニ会と共催で懇親会を開いていると発表した。
東京第2初級を支援する「2HOPE」からは姜相龍さん(50)が報告。ヘリコプターやF1レーサーの夢を持ってもらおうと、フライトシュミレーターを学校に置いたり、カーレース体験をさせている。泊まりがけで天体写真を撮りにも連れていく。会の名前をあえて「アボジ会」としなかったのは、「現役も元保護者も学校支援に参加できる受け皿にしたかった」からだという。
どの学校のアボジたちも、子どもと教職員、学校のために、行動する点では共通しているが、学校の基盤ともいえる児童・生徒数増加のための実践には大きな関心が集まっていた。過去10年で21人から81人へと児童生徒数を大きく増やした西東京第2初中アボジ会の黄賢二会長(39)は、「06年度の中級部休学の際、学校がなくなるという噂が回ったこともある。現状を打破するため、通学バスを出し、学童保育も19時まで運営するなど、保護者の具体的なニーズに学校側が応えたことが児童・生徒数増の要因だった」と語りつつ、教職員の負担が重くなっている点も気がかりだと話した。経験談を聞いた後は、グループ別のディスカッションへ。児童・生徒数増加のため、分会、支部で同胞の掘り起こしが必要だという積年の課題も示された。
6時間の熱弁、”地域で児童・生徒増やそう”
アボジ会には学校運営に携わっている人も多く、財政問題も関心のテーマだった。南武初級は、保護者の中には経済的負担から朝鮮学校への進学を躊躇する人もいるとして、初級部1年の学費を無料にしている。
4時間の会議はアボジたちの熱気をのせて、焼肉交流へ。16時過ぎまで続いたアボジサミットは、話が尽きず、次回開催のリクエストもあがった。「実際に話を交わす過程で、『自分の学校もがんばろう』という思いが沸いてきた」と語っていたのは、栃木初中アボジ会の鄭誠植副会長(44)だ。「児童・生徒数は12人、保護者数は8世帯。低学年はいない。何をやってもダメだとならないうちに先を見据えて、地域のみんなで動いていくことが大事だと思った。来年には新入生が入ってくる。今日の熱気を持ち帰って現場でがんばりたい」。
アボジ会のパワーアップを目指し、初めて開かれた関東アボジサミット。東京第1初中の李創建会長(47)は、「地元に帰った後、子どもや先生をどう補佐するか、無理をせず楽しくアボジ会を進められるかが大切だと思う。何より児童・生徒数を増やすため、各地域でがんばっていこう」と熱く呼びかけていた。