【特集】トンポ版海外ビジネスの手引き
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近年、積極的に海外へ進出する同胞企業家が増えており、業種やサービス内容も多様化しています。12月号では、世界各地で活躍する同胞企業家たちに話を聞きました。また、アジアを中心にビジネス進出をサポートするKIIRの取り組みのほか、進出のための具体的なノウハウも紹介しています。
●羽ばたく同胞企業家
世界を舞台にビジネスを挑む30、40代の企業家たちは、チャレンジとパイオニア精神に満ちあふれている。その挑戦の姿を追った。
①世界200店舗を目指して
李純哲・純峯さん(36)
FTG Company代表・副代表
②Lisa Kimとして世界で活躍中!
金里砂さん(38)
Intern Abroad, Inc代表
③市場拡大し、可能性が見えた
梁衡宇さん(40)
株式会社マックスマイル代表取締役
④現地の人たちに、しっかり技術を
高修満さん(32)
マツエクサロン「Daisy」マネージャー
●東北アジアを中心に同胞のビジネス進出をサポート! /同胞有志らがKIIRを立ち上げ
筆者:洪忠一(KIIR事務局長、朝鮮大学校政治経済学部准教授)
約7割。
海外に進出する日本企業の中で中小企業が占める割合です。この内、資本金5000万円以下の企業が占める割合が約4割にもなります。中小企業が海外進出に積極的に取り組んでいる現状を垣間見ることができます。
在日同胞企業の現状はというと、海外進出を考えることがなかなか難しいというのが実情かもしれません。海外に進出するとなると、現地でのネットワークやノウハウなど、必要なものは数知れず。そこに政治的な複雑さまで加味すると海外進出はかなりハードルが高く思えてしまうでしょう。現状にさして困難を感じていないなら、リスクの高い海外進出を選択しないのが「合理的」な経営判断です。
「KIIR」とは?
「現在」から「未来」へ。このように視点を変えるとどうでしょう。それでも日本という住み慣れた環境で事業を行うことが「合理的」な選択と言えるでしょうか。日本経済が二度と過去最悪の状況にならないとは言い切れません。また、在日同胞企業家にとって、チャンスに溢れた海外市場が突如として現れるということも十分にありえます。
事業環境の影響を色濃く受ける中小企業。その中小企業が高い割合で海外進出を試みている日本の現状は、未来を意識することの重要性を教えてくれます。
「積極的に海外に進出すべきだ!」、このようなスローガンを振りかざしたいわけではありません。しかし、取り巻く環境に左右されず、事業を発展させる多様な可能性、選択肢として、企業が海外進出できる環境を持つことは必ずやプラスになるはずです。
このことを踏まえ、在日同胞企業家の海外進出のための魅力的なツールを作ることができないか。そんな思いから企業家、研究者、有資格者ら有志が集い、海外での新たな可能性、選択肢を提供するための機関として、「Koryo Investment Information Research」、通称「KIIR(キール)」を立ち上げるための準備作業に着手しています。
世界には海外進出のためのコンサルタント機関が多く存在します。その中でKIIRは「世界で活躍するコリアンのネットワーク」を強みとし、海外進出をサポートします。
①海外視察およびビジネス交流の機会提供、②海外進出、投資に関する各種サポート、③経済情勢、投資に関する研究および情報配信―が主な内容です。
会員にはKIIR独自のネットワークと人脈を活かし、ビジネスに直結するような海外現地の政治、経済、文化の主要人物との面談、工場や労働者といった現地のビジネス関係者とのマッチングをはじめ、会社訪問、ビジネスプレゼンなどのサービスを実施する計画です。
中国での経済視察
いま、手始めに中国東北地方における経済視察を行っています。・・・
●トンポのための海外進出ノウハウ
筆者:高秀一(公認会計士)
はじめに
歴史的にみて、これまでの在日コリアンビジネスの繁栄は、ミクロ面における同胞の自助努力・相互扶助と、マクロ面における日本の経済発展(顧客の大多数を占める日本人の購買力の向上)の恩恵という2つの相乗効果によるものだと考えられる。
ところがこの先、日本は諸外国に先駆けて超高齢化社会を迎えることから、国内人口の減少と、それに伴う購買力の低下に陥り、国内マーケットは徐々に縮小に向かうのではないかと懸念されている。こうした環境下において、昨今、多くの日本企業では積極的に海外進出を進めており、とりわけ地理的にも近く、消費旺盛な中間所得層の台頭などの面から、マーケットの拡大が期待されるアジア方面への進出は顕著である。
そのような事実から、同じマクロ環境から直接的な影響を受ける在日コリアンビジネスにおいても、海外進出を選択肢の一つとして考えておくことは自然な流れなのだと思われる。これらに加えて最近では、初めから海外進出を念頭において起業を志す若い世代も少しづつ増えてきているように感じられる。個人的には、こうした若い世代のチャレンジを積極的に応援していきたい。
私見であるが、そもそも、在日コリアンがこの時代に、この日本に定住し糧を得ていること、それ自体は必然ではなく歴史的偶然でしかない。この先の時代の移り変わりにあわせて、若い世代が海外市場を含めた次のフロンティアを開拓することで、先代から受け継いだ経済的インフラをこれからも維持、発展させ、次の世代に繋げていく必要があるのではないか。
ここでは、私自身の経験も踏まえ、いくつかの典型的な質問と、進出先候補として有力視される地域の一つである香港について、Q&A形式でまとめてみた。特に若い世代の方々が海外ビジネスをイメージできる一助になれば幸いである。
Q.まず、進出を検討する場合における実務上の留意事項は?
A. 実務における一般的なプロセスは大雑把に、「①進出したい事業領域やサービスを決める→②進出国を知る→③法規制、税制を知る→④進出計画を立てる→⑤Go or Not Goを決める」の流れで進む。
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