【特集】どうなる? 朝鮮半島
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朝鮮民主主義人民共和国と米国とのし烈なつばぜり合いが続き、緊張の度合いを増す朝鮮半島関連のニュースが春先から連日メディアをにぎわせている。なぜ危機が繰り返されるのか、朝鮮半島情勢はどうなるのか、在日同胞への影響は―。今こそ、歴史的な経緯や構造を踏まえたうえで、ものごとを大局的かつ冷静にとらえる視点が必要ではないだろうか。「マスメディアのニュースだけではよくわからない」―そんな読者の声に応え、朝鮮半島情勢の今とこれからについて解説する。
朝鮮半島の火種は、そもそも誰が作ったのか目前の危機を歴史的に考察する
高演義●朝鮮大学校客員教授
世界の注目を浴びる朝鮮
朝鮮民主主義人民共和国が世界の注目を浴びている。地球は平壌中心に回り始めたのか。米大統領は「北朝鮮は最重要課題」と持ち上げるし、日本首相も「わが政権の最優先課題は拉致問題」とおらびあげる。まるで、朝鮮なくして自分なし、と告白しているみたいだ。
日本では、なぜ朝鮮はいつもこう地域の平和を乱そうとするのかと言い、とりわけ政治屋は国民にいらぬ危機感を煽り立てる。そのくせ、毎年打ち続く朝鮮抹殺目的の米韓合同軍事演習については一言の文句も言わない。この人たち、どうやら、お隣の朝鮮半島が今も戦争中であることをすっかり忘れてしまっているようだ。
米国が4月26日、5月3日と続けざまに大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した。が、日本ではほとんど報道されなかった。報道とは、何かを隠蔽するためにあるのだろうか。同じ発射を朝鮮がすると、たちまち痙攣を起こしたように大騒ぎする日本のマスコミの胡散臭さが、ここにある。
Q&A 朝鮮半島ニュースの正しいミカタ
読者のギモンに答えます!
朝鮮半島をめぐるニュースがメディアを騒がせているが、むずかしくてよくわからないという声も少なくない。読者から寄せられる素朴な疑問に対する答えや、現在の情勢を見るうえで押さえておくべきポイントを一問一答にしてまとめた。
Q1:「アメリカが北朝鮮を空爆する」とか物騒な話が流れているけど…。朝鮮半島で本当に戦争が起きるの?
Q2:なぜ朝鮮は核実験とロケット発射実験を繰り返しているの?
Q3:朝鮮の核・ロケット開発はどこまで進んでいる?
Q4:そもそも朝鮮は対米関係で何を目指しているの?
Q5:米韓合同軍事演習について詳しく教えて。
Q6:トランプ新政権の発足で米国の対朝鮮政策はどうなる?
Q7:朝鮮の核実験やロケット発射実験に対して国連が制裁を科している。ほかの国がやっても文句を言わないのに、なぜ朝鮮の場合だけ大騒ぎするの?
Q8:朝・日関係はどうなるの?
米国と朝鮮、対話はありえるか
廉文成●朝鮮大学校外国語学部教員
トランプ政権と朝鮮、対話は実現できるのか。平和協定締結へのテーブルに双方はいつ、つくことができるのか。その展望について説明する。
韓国で新大統領誕生―どうなる南北関係
金昌五●在日韓国民主統一連合(韓統連)青年学生育成委員長
キャンドル革命が成し遂げた歴史的政権交代
朴槿恵大統領の罷免に伴い、5月9日に前倒し実施された第19代韓国大統領選挙の結果、第1野党「ともに民主党」の文在寅候補が当選した。文在寅候補の得票率は41%で、24%にとどまった2位の「自由韓国党」(旧・セヌリ党主流派)の洪準杓候補に圧倒的な大差をつけての当選となった。また、野党3党の候補者の得票率合計は69%で与党2候補の支持率合計31%を大きく上回った。
現行憲法下で最初の与野党政権交代を実現した金大中大統領(98年~03年)は、初代KCIA部長である金鍾泌と提携して辛くも当選し、続く盧武鉉大統領(03年~08年)も現代グループの御曹司である鄭夢準と候補一本化してようやく当選にこぎつけた。過去の事例と比較するなら今回の選挙結果は、まさに革命的な変化と言えるだろう。
革命の主役は、言うまでもなくキャンドル民衆だ。
偏向報道で騙される日本民衆
安倍政権と御用メディア
浅野健一●同志社大学大学院メディア学専攻教授(大阪高裁で地位係争中)、元共同通信記者
政府とメディアの「印象操作」
米国の大学のジャーナリズム学科では新入生に、「政府当局者に対し懐疑的姿勢を保ち、権力を監視する」「森羅万象の出来事から人民が知るべき情報を取捨選択して取材し、客観的に伝える」「問題解決の道筋を示す」のがジャーナリストの責務だと教える。日本でも新人記者は「双方の言い分を聞く」のが基本だと教えられる。しかし、日本の報道機関の記者たちは、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に関する取材と報道ではこの原則を完全に無視し、朝鮮の言い分はゼロ、米・日政府の側に100%立った偏向報道を続けている。
朝鮮が行っている核開発とロケット発射実験を口実に、米トランプ政権は今年4月、朝鮮への先制攻撃をかけると威嚇した。世界の170以上の国々が承認している主権国家の指導者の「斬首作戦」が無批判に語られ、「北朝鮮がサリンを弾頭につけて着弾させる能力をすでに保有している可能性がある」(安倍晋三首相)などという妄想を伝えるのはジャーナリズムではなく、官報だ。