【特集】高校無償化裁判 大阪で歴史的勝訴!
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大阪朝鮮高級学校を高校無償化法の適用対象としないのは違法だとして、学校法人大阪朝鮮学園が国を相手に不指定処分の取り消しと適用の義務づけを求めた訴訟(以下、大阪無償化裁判)で、大阪地方裁判所は7月28日、適用対象から朝鮮高級学校を外した国の対応は違法、無効だと認定し、不指定処分を取り消して無償化の対象とするよう命じた。2010年4月の制度施行から7年、13年1月の提訴から4年半。ついに、朝鮮学校側の訴えを全面的に認める歴史的な判決が勝ち取られた。一方、大阪に先立つ19日、広島地裁では原告側の全面敗訴という不当判決が下された。
屈せざる者たち、結実した4年半のたたかい
DOCUMENT 7.28 大阪無償化裁判勝訴
午前11時、大阪地裁202号法廷。
「文部科学大臣が原告に対し」―裁判長の判決主文の読み上げが始まると、原告側の席から小さなざわめきが起こった。主文は、原告側の請求を棄却する際の定番である「原告の~」でなく、被告側を主語にして始まっていた。ざわめきはやがて傍聴席にも伝播した。
「…指定をしない旨の処分を取り消す」。第1項の読み上げが終わると、ざわめきは喜びと驚きが混じったどよめきに変わった。大阪朝鮮高級学校を無償化の対象に指定することを義務づける第2項が続く。原告・朝鮮学園側の全面勝訴判決。行政による差別という厚い壁を崩す穴が司法の良識によって穿たれた瞬間だった。
「やったぁ!」「よしっ!」「勝った!」
主文読み上げの終わりを待たず飛び交う拍手と歓喜の声。学校関係者、支援者、弁護士たちが握手を交わし、涙を流しながら抱き合う。チマチョゴリ姿の朝高の女子生徒たちも満面の笑みだ。
国の差別ただす歴史的判決
丹羽雅雄●大阪無償化裁判弁護団長
7月28日、大阪地方裁判所第2民事部(西田隆裕裁判長)が下した原告全面勝訴の判決は、戦後初めて、司法が良心と憲法、法律に基づいて、日本国(安倍政権)の差別行政を糾し、国に対して、生徒たちに就学支援金を支給するよう命じた判決であり、民族教育の重要な意義と朝鮮総聯の民族教育への協力の歴史的役割をも判示した歴史的勝訴判決であった。
勝訴判決のポイント
大阪地裁が配布した判決の要旨、原告側弁護団の報告などに基づいて、今回の勝訴判決のポイントをまとめた。
【請求の趣旨】(原告側は何を求めたのか)
【判断の概要】
争点①:規定ハ削除の違法性
争点②:大阪朝鮮高級学校の規程13条適合性
広島〝ヘイト判決〟
逆転勝利を誓った再出発の日
7月19日、大阪に先立ち、広島で無償化裁判の判決が下された。広島地裁は原告である広島朝鮮学園と110人の在学生・卒業生たちに全面敗訴を言い渡した。国(被告)の根拠のない主張を丸写しした司法の「ヘイト判決」を受け、同胞や支援者らはただちに控訴。逆転勝利を誓った。
無償化裁判の中で最も早い判決を迎えた広島。7月19日、16時の判決言い渡しを前に弁護士会館には広島朝鮮高校生と同胞、支援者たちが多く集まっていた。いつにも増して緊張感があるが、一人ひとりの表情は凛としている。東京、茨城、愛知、京都、大阪、山口、福岡、徳島…、そして韓国からも駆けつけた。強い日差しの中、横断幕とのぼりを手に裁判所まで行進すると、裁判所前に詰め掛けた報道陣らが一斉にカメラのフラッシュを向けた。
裁判所内では傍聴券を求めて234人が列をなし、混み合う中で抽選が進められた。法廷はこれまでと同じ60人規模。ほとんどは裁判所の外で判決の結果を待った。
広島では昨年4月の口頭弁論で、裁判長に当事者である原告の尋問申請などがことごとく却下され、原告弁護団と傍聴席が混乱した。それ以降、裁判長が公正な裁判を行う気があるのか、不信感が絶えなかった。それでも、原告らは裁判長に訴え続けた。この日も、日本の司法を信じ、判決の瞬間を待った。
広島と大阪―真逆の判決から見えてくるもの
田中宏●一橋大学名誉教授
第2次安倍内閣の初仕事は朝高除外
高校無償化からの朝鮮高校除外をめぐる裁判の判決が広島と大阪で言い渡されたが、両者は真逆のもの。二つの判決に目を通しながら、今後のことを考えてみたい。
2010年4月施行の高校無償化法は、その対象とする外国人学校について、(イ)ナショナル・スクール(大使館等の回答による)、(ロ)インターナショナル・スクール(国際的評価機関の認証による)、(ハ)その他(文科大臣が「高校の課程に類する課程」と指定)に区分、朝鮮高校は(ハ)に分類された。
2010年11月、「ハの規定に基づく指定に関する規程」(以下、規程という)が定められ、申請の受付、審査に関する体制が整い、朝鮮高校10校はいずれも申請。しかし、菅直人首相による審査凍結、凍結解除後も、民主党政権は結論を先延ばしした。12年12月26日発足の第2次安倍晋三内閣の初仕事は、皮肉にも朝鮮高校除外だった。