月間イオニュース vol.6
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憲法や人権等の問題に「偏って」
田場暁生(NPJ編集長 弁護士)
【NPJ】インターネットによる新しいメディア。運営する一般社団法人「News for the People in Japan」は、弁護士を中心に、ジャーナリスト、フリーランス、大学教員、学生、主婦などが、世代と職業の枠を越えて結びついた集団。憲法と人権を守る市民の側からの情報発信とコミュニケーションを提案している。インターネットによって全国津々浦々から市民の声を発信し、多様な価値観で社会をとらえ、主体的に社会に関わっていく。また、マス・メディア情報を分析・検討し、マス・メディアで取り上げない情報を流通させる発信者となっている。
【NPJのHP】http://www.news-pj.net/
Q:史上初の朝米首脳会談、どうなる?
A:朝米対立の歴史に終止符を
Q1:朝米首脳会談、「最大限の圧力」の結果?
A1:平昌五輪を契機とした北南関係の宥和、その結実としての歴史的な北南首脳会談、そして史上初の朝米首脳会談は6月初旬までの開催が予定されているね。また、3月末の金正恩委員長の電撃訪中に続き、習近平主席が朝米首脳会談後に訪朝予定だ。このような朝鮮の首脳外交による朝鮮半島情勢のめまぐるしい変化を、日米両政府は互いの緊密な連携のもと厳しい制裁や米国の軍事力を含む最大限の圧力をかけてきた結果だと主張している。
しかし、米国が朝鮮に核の放棄を前提とした対話路線へ政策転換せざるを得ない状況になったのは、朝鮮が国家核武力完成の歴史的大業を遂げた昨年11月がポイントだ。朝鮮が米国本土全域を射程内に収めるICBM「火星15」型の試射に成功したことにより米国の選択肢が大幅に減った。結果、米国は戦略国家としての地位を固めた朝鮮との対話に乗り出したんだ。
Q2:「非核化」、朝鮮の立場は?
A2:朝米首脳会談で、キーポイントになるのは「非核化」だが、重要なのは「非核化」に対する双方の認識の一致だ。
トランプ大統領は朝鮮半島北部の「完全かつ検証可能で、不可逆的な非核化」を求めるとしているね。一方で、朝鮮の一貫した非核化への立場は、「米国が朝鮮に対する核威嚇をあらため、南朝鮮の核の傘を閉じたとき、朝鮮に核は必要ない」と主張している(2009年朝鮮外務省談話)。また、「南朝鮮で全ての核兵器と基地を廃棄、核使用権をもつ米軍を撤収すべきだ」などの朝鮮半島非核化に対する朝鮮政府の原則的要求を五項目で発表している(2016年7月朝鮮政府代弁人声明)。米国による核の脅威を含む、すべての軍事的脅威が解消されたとき、朝鮮も非核化に応じるといった立場だ。
Q3:「非核化」が合意されたら、制裁も解除?
A3:朝米間で朝鮮半島の非核化合意がなされ、朝米間の外交関係が改善されるといって、米国による朝鮮への制裁も解除されると楽観的になってはいけない。朝鮮戦争から継続している米国の朝鮮制裁は、法律化されていて、制裁を解除するには米議会を通過しなければいけないんだ。米議会の承認を得ることに大きなハードルがあるのに加え、トランプ大統領は朝鮮に最大限の圧力をかけ続ける立場を明確にしている。現状、米国全体で制裁解除という雰囲気は醸成されていない。
北南首脳会談、朝米首脳会談、朝中関係の発展など朝鮮半島には緊張緩和と平和に向かった新しい気流が形成されているなかで、意識的に情勢を分析することが大切だよ。