月間イオニュース vol.9
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1枚の写真が国家を動かす
丸井春(DAYS JAPAN編集長)
【DAYS JAPAN】戦争、原発、環境問題、社会問題など、大手メディアが報じない問題を扱うフォトジャーナリズム月刊誌。毎月20日発売。編集部独自の視点による特集と、国内外の写真家によるフォトストーリーが中心。郵送による年間定期購読のほか、全国の書店でも取り扱いがある。バックナンバーの注文も可能。
2018年8月号では、「日本、朝鮮半島分断への責任」を特集している。月刊イオにも寄稿している乗松聡子さん(ジャーナリスト)と鄭栄桓さん(明治学院大学准教授)にインタビューを行い、苛酷な植民地支配の歴史や、朝鮮戦争に加担した上、その後も朝鮮戦争の終結を妨害し続けてきた日本の姿に迫った。朝鮮半島の緊張緩和の動きの中で、今こそ朝鮮への日本の加害の歴史を踏まえる必要性があることを広く問いかけている。
DAYS JAPAN8月号
お問合せ:TEL:03-3322-0233、FAX:03-3322-0353、Email:info@daysjapan.net
Q:税関が朝高生のお土産を押収したって?
A:土産品は押収の対象外
「即時返還、制裁廃止」の抗議殺到
Q1:関空の税関が神戸朝高生の朝鮮からの土産品を取り上げたって聞いたよ
A1:関西国際空港税関当局は6月28日、修学旅行で祖国・朝鮮民主主義人民共和国を訪問した神戸朝鮮高級学校3年生の生徒ら(62人)が持ち帰ったお土産や民芸品を不当に押収した。押収されたお土産には、祖国の家族と親せき、友人たちが日本で暮らす家族のために誠意を込めて準備したものや、日本の独自「制裁」の対象となっている輸入品には該当しないものもあったんだ。また、税関当局はお土産の押収に泣きながら抗議する神戸朝高生に対して、「任意放棄書」にサインするよう強要したんだ。ひどい対応だよね。この事件はSNSやニュースを通じて国内外で拡散され、日本各地の同胞や日本市民はもちろん、朝鮮本国や韓国の市民たちからも日本政府と税関当局に対する批判が高まったんだ。
Q2:日本は朝鮮に制裁をしているので、お土産の押収も仕方ないという声もあるけど
A2:日本政府が独自に課している対朝鮮制裁の一つである「外国為替及び外国貿易法に基づく北朝鮮に係る対応措置」で朝・日間の輸出入は現在、全面的に禁止されているが、「人道目的等に該当するものについては、措置の例外として取り扱うものとする」としている。また、輸入規制の根拠になっている外為法に基づいた輸入貿易管理令によれば、「個人的な使用目的で、かつ、売買の対象とならない程度の量の貨物」は輸入規制の対象外となっているんだ。神戸朝高生たちのお土産品は押収の対象じゃない。罪もない子どもたちを狙い撃ちにした卑怯な行為だ。
この事件を受け、7月19日、参議院議員会館で「『高校無償化』からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」と朝鮮学校関係者、在日本朝鮮人人権協会の代表らが内閣府、財務省、経済産業省に抗議・要請を行ったよ。連絡会の長谷川和男共同代表は神戸朝高生の土産品をただちに返し、二度と同様の事態を起こさないようにすること、非人道的な対朝鮮独自制裁をただちに廃止することを求めた要請文と国内外の団体、個人から集まった7564の署名を上記の3省庁担当者に手渡した。
Q3:そもそも日本の対朝鮮独自制裁って?
A3:2004年2月の「外国為替及び外国貿易法(外為法)」の改正、6月の「特定船舶入港禁止法」の施行を経て、日本政府は06年7月の朝鮮の人工衛星発射を口実に対朝鮮独自制裁を発動させた。その内容は、「万景峰92」号の入港禁止、最高人民会議代議員の渡航制限、再入国制限、そして朝鮮からの全ての品目の輸入禁止に及ぶ。その後も制裁措置は今日まで延長されている。09年には朝鮮に対する輸出を全面的に禁止する制裁措置を発表。13年には総聯副議長の渡航が制限された。14年5月のストックホルム合意を受けて、7月に制裁を「一部解除」したものの、16年には第2次安倍内閣が対朝鮮独自制裁を発表し、「一部解除」された制裁も復活、さらに制裁が強化されたんだ。「ヒト・モノ・カネ」の流れが全面的に遮断され、在日朝鮮人は祖国とのつながりを断ち切られるという苦痛を強いられている。