月間イオニュース vol.12
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公共性の高い報道 公平な社会の実現へ
神保哲生(日本ビデオニュース㈱代表取締役)
【ビデオニュース・ドットコム】2000年1月1日に放送を開始したニュース専門のインターネット放送局。地球環境問題や国際紛争、先進国と発展途上国の貧富の格差、司法制度改革などさまざまな社会問題を扱っている。メイン番組の「マル激トーク・オン・ディマンド」では、アメリカの哲学者のノーム・チョムスキー氏、前川喜平・前文科事務次官も出演した。
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Q:弁護士への大量懲戒請求、何が問題?
A:根底に在日朝鮮人、朝鮮学校に対する差別意識
Q1:弁護士へ懲戒請求(※)が大量に届けられたんだって。どういうこと?
A1:2016年3月29日、文科省が朝鮮学校が所在する都道府県に対し、朝鮮学校への補助金自粛を求めた「3.29通知」は記憶に新しいよね。東京弁護士会はこの通知を受けて、同年4月に朝鮮学校への補助金交付を求める声明を発表したんだ。
その翌年の17年11月、在日コリアンの排斥を訴える「余命三年時事日記」というブログが、東京弁護士会の補助金交付の声明に対して「確信的犯罪行為である」と非難を浴びせ、金竜介弁護士をはじめとする18人の弁護士の懲戒請求を同弁護士会に行い、懲戒請求を呼びかけたんだ。ブログの扇動を背景に大量の懲戒請求が各地の弁護士会に出され、金弁護士に対しては計959件の懲戒請求が出された。今年の7月、金弁護士は根拠のない懲戒請求を出され、名誉を傷つけられたとして、懲戒請求者に55万円の損害賠償を求める訴訟を起こしたんだ。
Q2:裁判の結果はどうなったの?
A2:10月23日、東京地裁は、金弁護士側の主張を認め、不法行為による精神的苦痛に対する慰謝料などとして、男性に33万円の支払いを命じたよ。人種差別的な懲戒請求に対して慰謝料が認められるのは初めてのことだ。
959件もの大量の懲戒請求が届いたことについて金弁護士は、「在日コリアンという出自を理由に、身に覚えのない懲戒請求は一言で非常に怖かった」と心境を話したよ。男性は、第1回口頭弁論を欠席し、答弁書の提出もしなかったため、即日結審したんだ。
金弁護士は懲戒請求に関する諸問題を裁判で解決し、東京弁護士会は弁護士の個人的な問題として懲戒請求をとらえるのではなく、日本の深刻な社会問題として取り上げていくとしているよ。
Q3:この問題の本質はどこにあるの?
A3:この問題の本質はどこにあるのかをよく考えてみる必要があるね。メディアでは、「懲戒請求制度を濫用した」「ネットのデマに扇動された」という部分にクローズアップした意見が多いよね。金弁護士はこの事件の本質についてこう話してくれたよ。「この事件の本質はインターネットの問題ではなく、在日朝鮮・韓国人に対する憎しみ、嫌悪から発生したという点にある。日本市民の差別意識を根本から解決していかなければならない」。
弁護士会が朝鮮学校への補助金交付を求めた声明を批判したブログに煽られ、送りつけた大量の懲戒請求は、在日朝鮮人の差別を扇動するヘイトクライムともいえる。その根底には、在日朝鮮人、朝鮮学校に対する差別意識が根強く残っているということだ。(おわり)
※【弁護士の懲戒請求】弁護士は、品位を失う行為などがあると、除名や戒告などの懲戒を受ける。懲戒の請求は誰でも可能であり、懲戒は基本的にその弁護士の所属弁護士会が調査し、処分を下す。