vol14.どこまでも自由で正直な“奇人”
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「慰安婦合意」や少女像、そして徴用工判決を巡る態度、さらには無償化裁判――。不実の底が抜けきったいま、「日本」を問い続けた先人を思い返している。宋斗会(1915年生)である。
一度見れば忘れられない風貌、学生時代から何度か目撃していたが、話を聴いたのは「浮島丸訴訟」の取材時だった。強制徴用された朝鮮人らが帰国のために乗った旧海軍輸送船が舞鶴沖で爆沈、判明分だけで549人もが死亡した大惨事の責任を問い、在韓遺族らが日本政府を訴えていた。宋は生存者や遺族を掘り起し、提訴を呼びかけた「仕掛け人」だった。
取材の場は、彼が70年代から暮らしていた京都大熊野寮である。宋に京大との縁はない。彼を慕う新左翼学生らが、鴨川の橋の下で寝起きしていた彼を寮に招き入れたのだ。仕事はしておらず、弁護士や大学教員を回って「カンパ」を集めていた。早い話が「カツアゲ」である。
(続きは「月刊イオ」2019年2月号に掲載)
写真:中山和弘
なかむら・いるそん●1969年、大阪府生まれ。立命館大学卒業。1995年毎日新聞社に入社。現在フリー。著書に「声を刻む 在日無年金訴訟をめぐる人々」(インパクト出版会)、「ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件――〈ヘイトクライム〉に抗して」(岩波書店)、「ルポ思想としての朝鮮籍」(岩波書店)などがある。『ヒューマンライツ』(部落解放・人権研究所)の「映画を通して考える『もう一つの世界』」を連載中。