年金:あきらめていた年金がもらえるかも
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在日同胞が直面する生活上のさまざまな問題の解決法について、人生のステージごとにわかりやすく解説します。
文時弘 ●在日本朝鮮人人権協会
年金
Q1 年金制度の改正で新たに老齢年金をもらえる人が増えると聞きました。
A:2017年8月から施行された改正年金法により、老齢年金を受給するために必要な最低限の年金保険料の支払い期間(受給資格期間)が「25年(300か月)」から「10年(120か月)」に大幅に短縮されました。これにより、25年の要件を満たしていなかった無年金の方も、10年の要件を満たしていれば新たに年金を受給できるようになりました。
たとえば、これまで年金保険料を10年分しか納付しておらず年金を受給していなかった方は、新制度施行後の2017年9月分から年金を受給できます(※1)。
新制度により10年の要件を満たした方には年金請求書が送付されます。まだ手続きが済んでいない場合、お近くの年金事務所で忘れずに請求手続きをしましょう(※2)
※1 20歳から60歳までの40年の全期間、国民年金の保険料を全額納付した場合、老齢基礎年金は満額(年額約78万円)となります。保険料を10年分支払った場合の老齢基礎年金の額は、比例して満額の4分の1になります。厚生年金に加入していた場合は、これに報酬比例の老齢厚生年金が上乗せされて支給されます。
※2 老齢年金の受給には5年の時効があります
Q2ユンさん(72)は7年分しか年金保険料を払った実績がありません。今回の制度改正によって年金がもらえるようになるのですか?
A:Q1でのべた「受給資格期間」は、「保険料納付済期間」だけではなく、免除申請等により年金保険料納付が免除された「保険料免除期間」+「合算対象期間(カラ期間)」を含めて計算します。「カラ期間」にはさまざまなパターンがありますが、たとえば、在日朝鮮人など外国籍住民が国籍要件で制度的に年金制度から排除されていた1961年4月~81年12月の間で、20歳~60歳の期間を「カラ期間」として受給資格期間に含めて算入できます(※1)。
1946年12月2日生まれのユンさんの場合、保険料納付済期間が18歳から会社で働いていた7年しかなく、新制度においても老齢年金を諦めていたそうですが、20歳になった66年12月から81年12月までの15年の期間が「カラ期間」の対象になります。この期間の中で厚生年金に加入していた5年を引くと、ユンさんの「カラ期間」はざっと10年あることがわかります。したがって、7年(厚生年金加入期間)+10年(カラ期間)=17年で受給資格期間の10年を満たしているので、7年分の加入実績にともなった老齢年金を受給できます。
ユンさんのように「カラ期間」を使ってはじめて受給資格期間を満たした方には「年金請求書」が送付されないので、自分で年金事務所で年金請求書をもらい、「カラ期間」を記入して請求する必要があるので注意が必要です。
自身が年金受給対象者であることに気づかず、受給できるはずの年金を受給していない同胞高齢者は相当数いると思われます。身近に思い当たる方がいれば、「カラ期間」の計算だけでもしてあげてみてください。
※1 この期間で厚生年金等に加入していた期間はカラ期間として重複して算入しません。なお、「カラ期間」は年金額には一切反映されないので、「カラ期間」だけで10年を満たしても年金を受給することはできません。
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