4・24の「キセキ」を劇場で/兵庫県青商会製作ドキュメンタリー映画「ニジノキセキ」
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兵庫県青商会が製作したドキュメンタリー映画「ニジノキセキ —『4・24』の未来へ、七色の架け橋—」。青商会が長編映画をプロデュースし、一般映画館での上映に至ったのは史上初のことだ。
本作は、昨年9月24日、「20年後の同胞社会の為に」というスローガンの下で行われた「ウリ民族フォーラム2018in兵庫」で発表された7つのプロジェクトの一環として、約1年半の製作期間を経て完成された。
フォーラムを機に兵庫県青商会メンバーは「兵庫の青年として耳に馴染んだ4.24だが、私たちはどれほど4.24を知っているだろう? 『4.24の精神』とは何なのか?」と問いかけ続けてきた。「私は、70年前の4.24教育闘争はただ単に民族教育を守った歴史ではなく、われわれが日本で堂々と生きていく民族の尊厳と誇りを守った歴史だと思っている」(映画製作委員長・プロデューサー・趙寿來兵庫県青商会会長、44)。
製作委は皆が素人だ。金功哲共同監督によると「朝鮮学校、在日同胞について全く知らない人に興味を持ってもらう」ことをモットーに、何度も話し合いと修正を重ね、自らの力で映画を作り上げたという。
製作委の趙源模事務局長(46)は「一心団結の力で、同胞社会全体で、皆でウリハッキョを守り発展させていく願いがこもった映画。これからウリハッキョのキセキ、子どもたちのきらきらした姿を兵庫から世界に発信していきたいと思っている」と話す。
映画のいう「キセキ」には、世代を超えて民族教育を受け継ぎ発展させてきた「軌跡」、あらゆる試練に打ち勝ち、今もなお誇り高くウリハッキョが存在している「奇跡」、ダイヤモンドの原石のようにウリハッキョに通う子どもたちのきらきらと輝く未来としての「輝石」という3つの意味が込められている。
ロードショーに先立ち神戸市内で行われた試写会(4月13、14日)には158人が参加した。日本社会における不当な差別のほとんどがウリハッキョに、子どもたちに向けられている「第二の4.24」と呼ばれている現在。スクリーンには高校無償化・補助金問題、ヘイトクライムなど、日本政府による政治的弾圧と社会における不当な差別の中、さまざまな形でウリハッキョを守りつづける同胞たちの姿が映る。…
〇『虹の軌跡―漫画で読む4・24教育闘争―』/作者は張守基さん、李民花さん
朝鮮学校の児童・生徒をはじめとする若い世代が具体的なイメージを持って「4・24の精神」を学べるようにと制作された『虹の軌跡 ―漫画で読む4・24教育闘争―』。漫画は兵庫県下の各朝鮮学校に寄贈されたほか、昨年のウリ民族フォーラムの会場で販売され反響を呼んだ。今回の「ニジノキセキ」上映に合わせ、会場でも販売される。
脚本を書いたのは、長田で平壌冷麺屋を営む張守基さん(37)。執筆を頼まれた当初は不安だったが、自身も「4.24」の現場で生まれ育ち、民族教育に触れ、地元の朝鮮学校で10年間の教員経験もあった。それらを振り返り引き受けることにしたそうだ。
「4.24(ルビ:サイサ)という言葉は幼い頃から聞いていたし、子どもたちにも教えてきましたが、いざ漫画にするとなると“分かったつもり”のことが多かったと気づきました。いちど心をゼロにして一から学ぼうと決めた」。地域の図書館などで片っ端から書籍を集め、4月24日の夜中に奮起して作業を始めたと笑う。
膨大な数の書籍、資料、新聞・雑誌記事を何度も読み込み、ノートに整理して骨格を組み立てていった。脚本化にあたって心がけたのは、メインの対象である初級部4~6年の児童たちが分かりやすい言葉選びをすることと自意識を反映させないことだった。
「例えば、証言集を読むと悲惨な事実がたくさん出てきます。妊婦がお腹を蹴られて流産したとか、警察に逮捕された同胞が拷問を受けたとか。そういう事実も伝えたかったけど、あまりに衝撃的な内容を入れると意識がそちらに逸れてしまう。『民族教育に対する差別の歴史を学ぶ』という軸から外れないようにしました」(張さん)…
一方、作画を担当したのは岡山朝鮮初中級学校と西神戸朝鮮初級学校で美術科目の講師を務める李民花さん(35)。以前から趣味で漫画を描いており、知人の推薦により引き受けることになった。自身の能力を同胞社会のためにアウトプットできることを嬉しく思いつつ、プレッシャーも大きかったという。
漫画化するにあたり、李さんも「4.24」の歴史と改めて向き合うことになった。「朝鮮学校の校歌に『4.24』が出てくるくらい、気づけばみんな知っているもの。でも逆に言えば、日常的だったからこそ能動的に知ろうという気持ちは起こらなかった」。描き進める過程にこれまで受動的だったことを恥じ、「この歴史を責任を持って伝ええなくてはいけない世代、伝えなければ恨まれる立場にいる」ことを実感したと話す。
物語は、「4.24の精神」が現代の子どもたちに受け継がれていく場面で幕を閉じる。歴史を記録するだけでなく、未来へつなげる―。この部分は李さんが積極的に意見を反映させて作ったそうだ。「いまの子どもたちも、大人になって新しいことを繰り返していく。いつの時代でも子どもたちを守る責任があるという思いを最後に込めました」(李さん)。…
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価格:1000円(税込)
問合せ:兵庫県青商会(Tel:078-335-5887、Email:hyogo.kyc@gmail.com)
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