幼保無償化Q&A―朝鮮幼稚園はなぜ除外?
広告
幼保無償化Q&A 朝鮮幼稚園はなぜ除外?
10 月1日から始まる幼保無償化から、朝鮮幼稚園を含めた外国人学校幼児教育施設が外されようとしています。制度の概要と朝鮮幼稚園の排除について、6つの問答でまとめました。
※参考・引用:「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」によるパンフレット
Q1.幼保無償化ってなに?
A:5月17日、「子ども・子育て支援法」が公布され、10月1日から幼児教育・保育の無償化(以下、幼保無償化)が始まります。この制度は、幼稚園、保育園、認定こども園の教育費を国が補助するものです。幼保無償化は2014年から段階的に実施されてきました。
幼保無償化に所得制限は設けられておらず(0~2歳児の保育料については一部制限あり)、幼稚園が公立か私立か、保育園が認可か認可外かなど、通う施設の制限もありません。
Q2.どうして幼保無償化が実施されることになったの?
A:日本政府によると、次のような理由があげられています。
①高額な教育費が少子化の原因のひとつになっている
②子育て世代の負担を減らすことで、どんな家庭の子どもも、質の高い教育が受けられる
③2019年 10 月の消費税増税による税収の半分を国民に還元する
今回の幼保無償化は、消費税増税分をその財源としており、国の予算は7764億円。消費税増税で見込まれる税収は5兆6000億円で増えた税収の15%弱が幼保無償化に充てられる計算です。
Q3.すべての幼稚園が対象になるの?
A:なりません。日本政府は 「3~5歳の幼児教育・保育の原則無償化」 をうたっていますが、実際には、各種学校認可を持つ外国人幼児教育施設や、幼稚園類似施設を無償化の対象外としています。
政府は、昨年12月28日の関係閣僚合意「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」で「法律により、幼児教育の質が制度的に担保された施設」の注釈において、各種学校は、①幼児教育を含む個別の教育に関する基準はなく、多種多様な教育を行っており、②児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しないため、無償化の対象とはならない―としました。
無償化から除外されることになった各種学校の幼稚園は全部で 88校。 朝鮮学校幼稚園40校、 インターナショナルスクールなどの外国人学校幼稚園が48校です。
Q4.なぜ各種学校は除外されたの?
A:日本政府が「除外」の方針を決めたからです。政府はこの方針を、都道府県への通知や都道府県の担当者に対する無償化説明会を通じて周知させています。
今回の無償化に際して、朝鮮幼稚園関係者が自治体に問い合わせをしたところ、複数の自治体から認可外保育施設の届出が可能であるとの説明を受けました。
4月24日、東京朝鮮学園は、東京朝鮮第1幼初中級学校、東京朝鮮第4幼初中級学校の認可外保育施設の届出を東京都保健局少子社会対策部保育支援課へ行い、受理されました。ところが後日、同課より届出受理は誤りで、取り消したいという連絡がなされたのです。
取消の原因は政府方針にある「各種学校は…児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しない」というものですが、この理由は法令上の根拠があいまいです。
厚労省によれば、認可外保育施設とは、幼稚園以外で幼児教育を目的とする施設において、乳幼児が少なくとも1日4時間以上、週5日、年間39週以上施設で親と離れることを常態としている場合は、保育の実態があり、こうした施設を認可外施設としています。各種学校認可された外国人学校の中には、何年も前から認可外保育施設としての届出を行い、指導監督を受けてきた所もあります。
届出は、児童福祉法に従い、保育の実態に即して判断すべきです。朝鮮学園幼稚部は、政府の方針とは逆で、認可外保育施設に該当するという他ないと思われます。
Q5.「すべての子ども」とうたっているのに、除外は差別ではないの?
A:法律の理念は「すべての子どもが健やかに成長することを支援する」となっています。それなのに、通う施設によって無償化になる子どもがいて、適用外になる子どもがいるのは制度の趣旨に反します。日本社会に暮らす、「すべての子どもたち」が無償化の対象となるべきです。
「各種学校だから保育の質が担保されない」という政府の説明は法令上の根拠が不明確で、保育の実態を無視しています。日本各地にある40の朝鮮幼稚部(幼稚班)は、都道府県知事により各種学校認可を受け、幼児教育・保育を、長い所で60年以上も続けてきました。また、従来の幼児教育だけでなく、保育にも重点を置き、保育士を採用し、職員の中から保育士を養成しています。「質の担保」ができないから対象にならないというのは、矛盾しています。
無償化の対象となる施設は、認可外保育施設も含め約5万5000にのぼるそうですが、朝鮮幼稚園を含む各種学校の幼稚園はそのわずか0.16%程度に過ぎません。
その点を見ると、各種学校だからというのは一つの口実にすぎず、本当のところは外国人学校、朝鮮学校を排除しようとする差別を隠す意図を感じざるをえません。
朝鮮高校だけを排除した高校無償化、地方自治体の補助金停止・削減に続き、幼稚園児までも排除する日本政府の方針は、民族教育に対する差別政策を積み重ねることになります。
今年は国連の児童権利宣言採択から60年。宣言は「人類は児童に対し最善のものを与える義務を負う」とうたっていますが、この理念をも踏みにじるのでしょうか。
Q6.朝鮮幼稚園の保護者たちの声は届いているの?
A:朝鮮幼稚園、朝鮮学園は、今回の無償化に際して対象に含まれるよう昨年から働きかけを続けてきました。しかし、政府が「各種学校は対象外」との方針を決め、さらに各地で認可外保育施設への申請も断られるなか、7月上旬に「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」(以下、連絡会)を結成、関係省庁、国会議員への要請を重ねています。
連絡会の代表らは、①各種学校の幼児教育・保育施設を無償化の対象として認めること、②上記施設を利用するすべての園児たちに、幼稚園並みの月2.57万円の無償化と、幼稚園預かり保育と同等の月1.13万円を加算する無償化を適用すること―を求めています。
また、日本政府が同じく無償化適用外となっている「幼稚園類似施設」については、自治体との協議のもと何らかの支援策を講じるとしていることから、外国人学校幼児教育施設に対しても同等の支援策を講じるなどして無償化の対象として認めるよう、要請を続けています。