【特集】にほんで学ぶ~外国ルーツの子どもたち
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今年4月、日本で新在留資格が創設された。昨年9月には外国籍者の数が日本の全人口の2%を突破している。しかし、長らく日本で外国籍の子どもは法制度上、義務教育の対象になっておらず、未就学の子どもに対する実態調査もなされていない。日本で暮らすことになった外国ルーツの子どもたちの教育はどうなっているのか―。公立学校の教育現場、地域の支援の現場を歩き、識者の提言に耳を傾けながら、現状と課題を探った。
ルポ 外国につながる子どもたちの教育はいま―
公立学校と教育支援の現場から探る
外国につながる子どもたちの教育の現状を、日本の公立学校とそれを取り巻く現場を中心に探った。
国際教室で学ぶ子どもたち~平塚市の公立小学校
神奈川県平塚市。自動車関連を中心に工業都市として発展してきた同市内には2019年1月時点で70ヵ国以上、4877人の外国籍住民が暮らしている。外国籍住民は1980年代後半から急激に増えていった。自動車工場などが多い同市に多くの日系ブラジル人が移り住んだこと、ベトナム、カンボジアなどのインドシナ難民が平塚市横内にある県営住宅に定住したのが増加の主な要因だ。
平塚市立神田小学校は全校児童380人のうちの約1割が外国につながる子どもたち(外国籍や外国にルーツを持つ日本国籍の児童・生徒)。同校では日本語が不自由だったり日本の文化に慣れていない外国につながる子どもたちや帰国子女に日本語やほかの教科の勉強をサポートする国際教室を設置している(図1参照)。
9月上旬の某日、同校で運営されている国際教室を訪ねた。
国際教室では35人の児童たちが学ぶ。普段は普通クラスに属しながら、それぞれの教科の学習の進み具合に合わせて授業ごとに国際教室で学ぶ仕組みだ。国際教室は日本語指導が必要な児童が学校に5人以上いれば開設することができる。行政から教室運営のための予算がつき、学校の国際教室担当教員のほかに、市から外国語を話せる日本語指導協力員が派遣される。対応言語は11言語におよぶ。
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【インタビュー】国と人、それぞれがすべきこと
外国ルーツを持つ子どもたちの多くは、言葉や制度など、日本でさまざまな壁や段差を感じている。外国ルーツの子どもにも平等な教育機会が保障される社会にするため、国が、そして民間がすべきこと/できることはなにか。2人の専門家に聞いた。
①外国人学校の教育保障する法律を
田中宏さん(一橋大学名誉教授)
日本政府の外国人学校政策の本質を知るうえで、朝鮮学校に対してどのような政策を取ってきたかを見る必要がある。日本が米軍の占領下にあった1945年から52年まで、在日朝鮮人は日本国籍を持っているから日本の学校に行くべきで、民族教育は認めないという方針だった。「すべての国民は…教育を受ける権利を有する」。日本国憲法の一文にあるこの「国民」という言葉の中に外国人は含まれないというのが日本政府の考え方。差別ではない、日本の教育を受けたいなら小学校でも中学校でも授業料はいりません、教科書も無償で差し上げます、来たければ来てください、ただし、民族教育は認めない。これは植民地時代と何も変わっていない。
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②学校の内と外に学びの場を
田中宝紀さん(NPO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部責任者)
文科省が2年にいちど公表する「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」(16年度※)によると、学校側から“日本語が分からない状態”と認識されている外国ルーツの児童・生徒は、日本全国の公立小・中学校、高校、特別支援学校や中等学校に4万3000人以上在籍していることが明らかになっています。さらにその1/4である約1万400人は日本語指導をまったく受けられていません。
過去に、中学1年生で日本に来て公立の学校に毎日通ったものの、1年半後に私たちが運営している「YSCグローバル・スクール」(以下、YSC)を知り訪ねてくるまで「おはよう」「ありがとう」などの簡単な単語しか話せなかった子もいました。言語を自然習得することができる時期は、おおよそ10歳よりも下の年齢まで。臨界期を超えてしまったら、文法を体系立てて学習しないと習得は難しいと言われています。
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