【特別企画 】幼保無償化、もっといい制度に
広告
10月1日、一部の子どもたちを取り残したままスタートした幼保無償化。形式やカテゴリで判断し、数多くの矛盾を生んでいる制度の見直しを求めて各方面から声があがっている。当事者たちの要請、外国人学校の主張、地方自治体の状況を紹介する。
“私たちを見て”―5500人が集会とパレード/「朝鮮幼稚園はずしにNO! すべての幼児に教育・保育の権利を 11.2全国集会」
朝鮮幼稚園はずしにNO! すべての幼児に教育・保育の権利を11・2全国集会」が東京・日比谷野外音楽堂にて行われ、約5500人が駆けつけた。会場は、日本各地の朝鮮幼稚園から寄せられた横断幕、差別を許さないという当事者や支援者たちの思いが表現された色とりどりの手作りプラカードで溢れた。
集会には、朝鮮幼稚園に通う子どもとその保護者たち、朝鮮学校生徒、朝鮮大学生を含む多くの同胞のほか、さまざまな日本の市民団体や国会議員、自治体の議員らが参加。主催者による報告のあと、連帯のあいさつが送られた。
国会議員も動く/朝鮮幼稚園を見学、“なんとかしないと”
「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」(宋恵淑代表、以下連絡会)は、7月19日の結成以来、内閣府、厚生労働省、文部科学省などの関係省庁に外国人学校幼児教育施設を幼保無償化の対象として含めるよう要望を重ねる一方、国会議員を直接訪ねたり院内集会を開き、国会内での世論を喚起してきた。
11月6日には、立憲民主党の初鹿明博、尾辻かな子の両衆議院議員が東京朝鮮第1初中級学校(東京都荒川区)を訪問。付属幼稚班を見学した後、学校関係者、保護者たちと面談した。学校訪問は、連絡会の代表らが10月4日に行った立憲民主党への協力要請が契機となり実現した。
園児たちの元気な姿に目を細めた両議員。朝鮮語と日本語の歌を披露すると、尾辻議員は「チャムチャレッソヨ!(よくできました)」と笑顔で拍手を送った。二人は同行した保護者や教員たちに質問もしながら施設を見て回った。
面談の場では、より具体的な言葉が交わされた。…
“子どもたちの姿を見て”/続く自治体への要請
幼保無償化の対象外となったことを受け、朝鮮幼稚園が所在する各都府県の保護者たちも連絡会を結成。各種学校も幼保無償化の対象にするよう自治体への要望を続けている。
保護者たちが自治体への要請を続けているのは、日本政府が朝鮮幼稚園と同じく無償化適用外とした「幼稚園類似施設」については、自治体との協議のもと、何らかの支援策を講じるとしているからだ。各地の連絡会は、外国人学校幼児教育施設に対しても、同等の支援策を講じるなどして、保護者の負担を軽減するよう、要請を重ねている。
10月30日には、横浜朝鮮初級学校の梁桂鳳校長をはじめとする「神奈川朝鮮学園保護者連絡会」のメンバー、横浜初級、鶴見朝鮮幼稚園の保護者ら12人が横浜市役所を訪れ、▼すべての幼児たちが差別なく無償化の対象になるよう、国に対して訴えること、▼国が各種学校幼稚園を無償化の対象と認めない期間、保護者たちの負担を軽減するための措置を講じることなどを要請した。立憲民主党の荻原隆宏、山浦英太の両市議会議員が同席。横浜市子ども青少年局の職員2人が応対した。…
ブラジル、中華、インター/私たちも声を上げる
⓵「子どもは社会の宝であり、未来」(愛新翼・神戸中華同文学校名誉校長)
兵庫県外国人学校協議会は、阪神淡路大震災を機に、地域の外国人学校同士、今後は協力し合いながら環境の改善や権利向上に努めようとの目的で結成された。兵庫県下にある5校のインターナショナルスクール、6校の朝鮮学校、1校の中華学校が加盟している。今日は加盟校を代表して発言したい。
幼保無償化制度について聞いたときは期待したが、具体的な内容が明らかになる過程で喜びは落胆に変わった。さまざまな施設の中で各種学校は対象外になっており、その理由が「多種多様な教育をしているから」だという。安倍総理自身、多様性に関しては積極的な発言をしているのに、多種多様な教育をしている各種学校は対象外になり、理解に苦しむ。
子どもは社会の宝であり、未来だ。先日、協議会の定例会議でも、各学校の校長・代表たちは「すべての子どもを支援することが必要であり、政府の意図で除外するのは受け入れられない」と仰っていた。このような状況が一日も早く改善され、子どもたちが健やかに成長できるよう、ご協力願いたい。
⓶「“多種多様”の可能性、奪わないで」(ジェイ・バルク・芦屋インターナショナルスクール校長)
朝鮮学校の方たちは、この問題をすぐに理解して1年ほど前から動いていたと聞いた。私たちは、保護者の問合せをきっかけに幼保無償化の対象から外れるということを知り、県に問い合わせたが、具体的な返答はなかった。最近になって“対象外”という立場に置かれていることを実感した。
「多種多様」というもののなかにはいろんな可能性がある。私たちの学校は、日本の内外で子どもたちがやりたいことを手助けしている。その機会を奪うのは間違っているんじゃないか。待機児童問題の解消という面でも貢献している側面はあると思う。「外国人学校を排除している」とは言わないが、こちら側としてはそう思ってしまっても仕方がない。「非常にフェアじゃない」という声は、インターナショナルスクールの校長たちからもたくさん上がった。
今後、インターナショナルスクールの保護者たちが、さらに疑問を持つようになるはず。私はその疑問を代弁するためにここへ来た。各種学校の校長としての立場や現場の声を知ってもらうことが今日の私の役目だと思う。制度をどう変えていくのかは国会議員が決めることだ。制度を見直してほしい。
⓷「保育の受け皿、行政が支援を ~ブラジル学校の現状」(寄稿、河かおる・滋賀県立大学准教授)
滋賀県愛荘町にあるサンタナ学園というブラジル学校を支援するNPOの理事をしている。サンタナは各種学校未認可で、0歳から18歳まで約80人の子どもたちが通い、学校、保育所、学童保育など様々な役割を果たしているが、どの役割に対しても公的補助がない。1998年に保育所としてスタートしたサンタナは、2001年に認可外保育施設として届出て、20年以上にわたりブラジル人の保育の受け皿となってきた。
2017年末に幼保無償化政策が打ち出された際は認可外保育施設の扱いが決まっていなかったが、18年5月、認可外も対象とする検討結果が出た。これを受けNPO内で議論をし、何としても無償化の対象になり、保育だけでも公的補助の道筋を付けようと動き出した。ところが12月になると、認可外の基準を満たしていない保育所は自治体の裁量で除外できるようにするという方針が示された。その基準のうち、保育士資格に関する基準をブラジル人の保育所が短期間で満たすことはほぼ不可能で、対象外となれば園児が集まらず学校の存続にも関わる。12月末に関係閣僚合意で方針が固まったのを受け、自治体へ要請に出向くことにした。…
以上は特別企画からの抜粋になります。全文ご覧になるには本誌をご覧ください。購読お申し込みはこちらへ。
Amazonでも取り扱いがあります。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07XW6TJZB/