現役最後の大舞台で輝く/Vol.1 女子レスリング
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Vol.1 女子レスリングパク・ヨンミ(28)
1991年2月8日、平壌生まれ。2019年、「人民体育人」称号授与。
過去の主な戦績
2013年アジア選手権48kg級:優勝
18・19年アジア選手権53kg級:優勝
18年アジア競技大会53kg級:優勝
19年世界選手権53kg級:優勝
現役最後の大舞台で輝く
金淑美(朝鮮新報平壌支局)
2019年9月に行われたレスリング世界選手権女子53kg級で優勝し、東京五輪への切符をつかみ取った。
18年、19年のアジア選手権連覇で「アジア最強」の地位を不動のものとしたパク。満を持して迎えた世界選手権の決勝では、「ポスト吉田沙保里」の呼び声も高い日本の向田真優(22)を4月のアジア選手権に続いて下した。
朝鮮女子レスリング界をけん引するベテランは頭脳派の選手。試合運びが巧みで、予想外の状況にも即座に対応できるというのが関係者らの評価だ。自ら積極的に攻撃を仕掛けることは少ないが、虎視眈々と狙って繰り出すカウンター攻撃は高い精度を誇る。その強さは、女子レスリング強豪国である日本の選手たちからも一目置かれる。
所属は平壌体育団。レスリングを始めたのは14歳と決して早くはない。22歳で出場したアジア選手権48kg級で国際大会初の金メダルを獲得。さらなる活躍が期待されたが、そこからしばらく国際大会で優勝できない日々が続いた。その後、階級を53kg級に上げると、5年後の18年アジア選手権で悲願の優勝。アジア王者に返り咲いた。
同年8月のアジア競技大会では、大会前に左足を骨折し、出場すら危ぶまれたが、優勝。奥野春菜(20)との準決勝では試合終了3秒前に逆転する劇的な展開だった。続く19年のアジア選手権、向田との決勝では、2対3で迎えた終盤にタックルを決められ万事休すと思われたが、残り10秒で相手の背後を取り、逆転勝利で大会連覇を果たした。
「生まれ持った才能があっても情熱がなければ成功できない。慢心こそ敗北」。穏やかな語り口に、内に秘めた熱い闘志が垣間見える。
28歳のベテランが自ら「現役最後の舞台」に定めた東京五輪が近づいている。パクの快進撃は表彰台の一番高いところへ一直線につながっている。
いくつ知ってる? オリンピックと朝鮮
2020年の東京五輪を前に、知っているようで知らないオリンピックと朝鮮に関するさまざまな記録や雑学を2回にわたって取り上げます。1月号では、朝鮮が出場した大会、獲得メダル、得意種目などについて紹介します。
110大会に出場、初出場は72年ミュンヘン大会
1972年の第20回ミュンヘン五輪(西ドイツ)で、朝鮮は「D.P.R.Korea」の正式名称で夏季五輪に初参加。これを皮切りにこれまで10大会に出場した。参考までに、朝鮮が冬季五輪に初参加したのは、64年の第9回インスブルック五輪(オーストリア)で、同大会が北南朝鮮初の五輪同時参加となった。
84年のロサンゼルス五輪では、「東西冷戦」が激化するなか、朝鮮やソ連、東欧諸国が大会参加をボイコット(80年のモスクワ五輪では米国、日本などが参加をボイコット)。88年のソウル五輪では朝鮮、キューバなどが大会不参加を表明した。
2000年のシドニー五輪では、北と南の選手団が「統一旗」を掲げて、史上初となる合同入場を果たした。
2総獲得メダル数は54個! 金は16個
これまで夏季五輪で朝鮮選手たちが獲得した総メダル数は54個。内訳は、金メダル16個、銀メダル15個、銅メダル23個だ。
金メダル第1号は、初出場の1972年のミュンヘン五輪の射撃競技50mライフル伏射に出場したリ・ホジュン選手。50mライフル伏射とは、伏せた姿勢から50m先にある固定された標的をめがけて60発撃ち、合計点数を競う競技。当時のルールでは最大600点満点(10点×60発)だが、リ選手は599点という驚異的な成績で五輪・世界新記録を樹立。射撃精度の高さを世界に知らしめた。
朝鮮が最も多くのメダルを獲得した大会は1992年のバルセロナ大会で、金4個、銅5個の合計9個のメダルを獲得した。また、一つの大会における金メダルの最高獲得数は4個。前述のバルセロナ五輪と2012年のロンドン五輪だ。
3得意種目は重量挙げ、レスリング、柔道など
朝鮮が五輪でメダルを獲得した競技は、重量挙げ(金5、銀7、銅5)、レスリング(金3、銀2、銅6)、柔道(金2、銀2、銅4)、ボクシング(金2、銀3、銅2)、体操(金3)、射撃(金1、銅2)、卓球(銀1、銅3)、バレーボール(銅1)だ。重量挙げでは通算5個の金メダルを獲得しており、銀・銅メダルも含めて最も多くのメダルを獲得している。まさに朝鮮の「お家芸」と言えるだろう。
朝鮮オリンピック委員会によると、東京五輪では、サッカー、卓球、ハンドボール、重量挙げ、柔道、ボクシング、レスリング、水泳、陸上、射撃、アーチェリーなどの競技で出場資格獲得を目指している。