【新春対談】民族教育の権利、どう守る― 裵明玉弁護士(愛知)×金敏寛弁護士(福岡)
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高校無償化裁判、「不当な支配」論にしがみつく司法
支援の広がり、今後の運動の財産に
悲観論に陥らず、小さな実践から
朝鮮高校を高校無償化・就学支援金支給制度の適用対象外としたのは違法だとして、日本各地5ヵ所で朝鮮学園、在校生・卒業生らが国に対して処分取り消しなどを求めた裁判が最終局面を迎えようとしている。九州(福岡)と愛知の弁護団でそれぞれ事務局長を務める金敏寛弁護士と裵明玉弁護士に裁判の現状、民族教育の権利をめぐる今後の運動課題などについて話し合ってもらった。
―愛知では控訴審で原告の訴えが棄却され、九州では控訴審が続いています。それぞれ自分の地域の裁判の現状についてお聞かせください。
裵明玉(以下、裵):各地の無償化裁判で国側は、「朝鮮学校は朝鮮総聯から不当な支配を受けているおそれがあるので、学校運営が適正になされていない可能性がある」というロジックで勝ってきた。ただ、愛知では無償化問題が浮上する前から毎年、朝鮮学校が県から徹底的な立ち入り監査を受け、運営に問題はないというお墨付きを得ていた。それなのに、なぜ負けたかのかというと、教育内容だ。「北朝鮮の国家指導者を賛美する偏った教育」をしているのではないか、それは朝鮮総聯から「不当な支配」を受けているためではないか、という理屈で国の主張を正当化した。すべてが「~ではないのか」という不確かな話で負けた。これが、名古屋地裁判決の特異な点だ。
日本国憲法や教育法における「教育の自由」に、在日朝鮮人の子どもたちの民族教育を受ける権利に照らしても、教育内容を問題にすることはおかしいと主張して控訴審をたたかってきたが、判決は覆らなかった。高校無償化法では外国人学校について個別具体的な教育内容は問わないとしているので、今回の判決は無償化法の解釈の面からも間違っている。朝鮮学校にとって、朝鮮を祖国とするのはコアな部分だ。そこを否定するという判断を政府ができるようには法律の立て付けはなっていない。上告審で一番大きく主張したいのは、平等権侵害だ。ほかの外国人学校は教育内容不問なのに、朝鮮学校はなぜだめなのか。外国人であっても、当然差別されない権利がある。
金敏寛(以下、金):九州では控訴審の第1回口頭弁論が終わり、第2回が12月20日に予定されている。ほかより遅れて裁判が始まった九州は、他地域の裁判での主張ももらさず取り込んでいこうというスタンスでやってきた。すでに東京と大阪の裁判は最高裁で敗訴が確定した。愛知でも控訴が棄却された。この現状で他地域と同じ主張だけしていてもだめだと思っている。今後は民族団体との関りもオープンにしたい。朝鮮学校は民族団体や祖国と関係を持って当然であること、関係を持ちながらも独自性を持って学校運営ができているということを立証していきたい。
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