vol.27 被害回復のため、「差別」を犯罪に/ヘイト国家に必要な「刑事司法」
広告
レイシストによる京都朝鮮第一初級学校への攻撃が続いていた2010年2月、国連の人種差別撤廃委で、差別的動機に基づく犯罪「ヘイトクライム」への対処を求められた日本政府は、「差別的動機については量刑に反映している」と答えた。だが京都事件は執行猶予、犯人はその後も差別街宣を繰り返し、うち2人は収監された。これは司法の失態だった。
政府は以降も同じ答弁を繰り返すが、今に至るまで「民族差別」で量刑が加重された例はない。だからこそ昨年12月12日、川崎市で悪質な差別煽動に刑事罰を課す条例が制定された意味は大きい。「やまゆり園」事件が起きた相模原市でも条例制定の動きが進む。レイシズムと歴史改竄を資源とする現政権を地方の運動で包囲していく。これは川崎発の運動モデル、いわば「展望」である。
元より差別を巡る司法判断は、被害者が起こした民事訴訟で判例が積み重ねられ、前進してきた。ヘイトクライムも然り。京都事件や、ほぼ同じ面々が起こした徳島事件などがそうだ。
京都事件では人種差別撤廃条約を援用(3例目)し、差別を賠償額に反映させた…。(続きは月刊イオ2020年3月号に掲載)
写真:中山和弘
なかむら・いるそん●1969年、大阪府生まれ。立命館大学卒業。1995年毎日新聞社に入社。現在フリー。著書に「声を刻む 在日無年金訴訟をめぐる人々」(インパクト出版会)、「ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件――〈ヘイトクライム〉に抗して」(岩波書店)、「ルポ思想としての朝鮮籍」(岩波書店)などがある。『ヒューマンライツ』(部落解放・人権研究所)の「映画を通して考える『もう一つの世界』」を連載中。