特別企画「4月からが正念場! 幼保無償化、もっといい制度に」
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2019年10月に始まった幼保無償化から半年。日本各地では外国人学校幼児教育類似施設への幼保無償化の適用を求める署名活動や要請が続き、日本の各界も声をあげている。4月からは無償化対象外となった施設への調査事業が始まり、自治体への働きかけが本格化する見通しだ。
【全文公開】4月から新事業、自治体への働きかけを
宋恵淑(幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会)
日本政府は、「幼保無償化」の適用から外(さ)れた施設に対する支援策(別項)を講じることを発表していますが、この支援策に朝鮮幼稚園が入るかどうかのポイントのひとつが、各自治体において判断する施設で、自治体が現に支援を実施しているか、今後支援を検討しているもの等が対象となる、というものです。
朝鮮幼稚園に対しては、幼保無償化が始まる前から保護者補助金など、様々な名目で補助金を支給している自治体もあれば、全く支給していない自治体もあります。よって、朝鮮幼稚園に通う園児のいる自治体での補助金支給状況を把握し、これまで支給されてない/かつて支給されていたがストップした自治体に対して、幼保無償化が始まったので、すべての子どもたちの健やかな成長を支援するという理念に即して、朝鮮幼稚園に対しても補助金を支給するよう求めていくことが大事です! まずは現状を把握し、どう働きかけていくか、区議や市議と相談のうえ、作戦を立てましょう。
その際の要請のポイントは3つ。①朝鮮幼稚園を幼児教育類似施設としてきちんと認識させ、訪問を促す、②幼保無償化から外れている現状に鑑み、自治体独自の支援策を講じるよう要請する(このような要請により、昨年10月以降、実際に補助金支給が実現した自治体もあります!) ③2021年より本格実施される幼児教育類似施設に対する支援策に朝鮮幼稚園をはじめとする各種学校幼稚園が対象となるよう、自治体としてしっかりと都道府県、国に意見をあげるよう促す―ことです。すでに補助金が支給されている場合は、③を多角的に行いましょう。
自治体への働きかけは、区議や市議をはじめとする、日本人支援者・ファンと一緒に行いましょう。
近隣の認可幼稚園などの保護者にも、幼保無償化制度の、そもそもの制度的欠点を共有し、一緒に活動していく。朝鮮学校の保護者には、お子さんを保育園に預けていた方もいらっしゃるはず。そうしたつながりや縁を辿ってみるのもよいと思います。近隣に各種学校の外国人学校幼稚園があれば、その保護者たちにも幼保無償化のブックレットを持っていき、ともに取り組もうと呼びかけましょう。
保護者連絡会としては、子どもたちが仲間外れにされることなく、すべての子どもたちが平等に健やかに育つ社会の実現を目指して、様々な企画を進めていこうと思っています。シンポジウムや集会、ブロックごとの経験共有交流など多種多様な催しを通して、世論を盛りあげていきたい。いつでも講師を派遣しますし、アイデアも募集しています。経験共有のための保護者代表による連絡網も作りたい。アイデアや情報は、hsong7647@gmail.comまでお気軽にお寄せください。
※4月から始まる調査事業とは?
日本政府は19年12月20日、2020年度予算案を閣議決定し、幼保無償化の対象から外されていた「幼児教育類似施設」に対する新たな支援策として2億円を盛り込んだ。文部科学省がモデル事業として自治体に委託し、自治体を通じて地域の幼児教育に貢献する施設や団体を財政支援するという。文科省HPによると、事業名は、「地域における小学校就学前の子供を対象とした多様な集団活動等への支援の在り方に関する調査事業」、事業内容は、「幼稚園や保育所、認定こども園に通っていない満3歳以上の小学校就学前の幼児を対象に、自然体験、様々な遊びや生活体験を通じた集団的な活動を行う施設等に対して支援を行っている自治体に対して、それらの施設等の支援の方策に関する調査を委託」する。
詳しくは、文科省HP(https://www.mext.go.jp/content/20191220-100014477_01.pdf)
文化の多様性こそ、日本の財産
尾辻かな子・衆議院議員
大阪出身の尾辻かな子・衆議院議員(45、立憲民主党)は、朝鮮幼稚園を視察して保護者の声を聞くなど、問題解決に尽力している。差別の克服には何が必要か、話を聞いた。
“支援してくれる日本市民、たくさんいる”
京都の朝鮮幼稚園保護者たちが関係府省に要請/4120枚のメッセージたずさえ
京都朝鮮学園の趙明浩理事長をはじめとする「幼保無償化を求める京都朝鮮幼稚園保護者連絡会」(京都連絡会)のメンバーが2月13日、内閣府、文部科学省、厚生労働省の担当者と東京・霞が関の関係府省で面会し、朝鮮幼稚園が無償化の対象施設として認められるよう要請した。また日本市民や同胞たちから寄せられた幼保無償化適用を求めるメッセージカード4120枚を手渡した。
保護者たちの気持ち、掘り起こそう
京都、東京、埼玉の保護者たちが経験共有
「え!? うちらって同級生なん?」「朝大のどこの学部出身?」「出身地も一緒!」「アッパたちももっと積極的に署名活動や街頭宣伝に参加してほしいよね」「ほんとにね~!」―。
関係府省への要請を終えた後、京都と関東の朝鮮幼稚園保護者たちの間で、お互いの経験や活動を共有し、幼保無償化運動で直面する各地の悩みや苦労を打ち明ける場が設けられた。
朝鮮学校差別などテーマに/国際基督教大学主催でシンポ
朝鮮学校差別を主要テーマの一つにすえたシンポジウムが2月14日、国際基督教大学で開かれた。また、日本各地の弁護士会から、朝鮮幼稚園をはじめとする外国人学校の幼児教育・保育施設にも幼保無償化制度を適用するよう求める声明や意見書が相次いで出され、朝鮮幼稚園に幼保無償化適用を求める「100万人署名運動」に日本人有識者も続々と賛同を示している。
幼保無償化関連の最近の動きをまとめた。国際基督教大学(ICU)の社会科学研究所(所長=徐載晶教授)が主催するシンポジウム「差別・憎しみ・表現の自由」が2月14日、東京都三鷹市にある同大キャンパス内の施設で開かれた。
シンポジウムでは朝鮮学校に対する差別の問題が主要なテーマとして掲げられた。徐所長は開会のあいさつで、「朝鮮高校や朝鮮幼稚園が無償化プログラムから除外されている動きを憂慮している。よりよい未来、よりよい社会について考えるためにも、この問題について議論する場が必要」と開催の趣旨についてのべた。シンポでは、弁護士や支援団体の代表など朝鮮学校にゆかりのある人びとも登壇し、日本社会でいまだ続く朝鮮学校に対する差別の解消を訴えた。
第1部では、「差別と表現の自由」をテーマに、亜細亜大学教授の加藤隆之さん、専修大学講師のパトリック・ガルブレイスさんがそれぞれ発表を行った。
朝鮮幼稚園にも無償化を、各界で声あげる
「日本国憲法、人権諸条約に違反」ななめ各地の弁護士会が声明、意見書発表
幼保無償化制度から朝鮮幼稚園をはじめとする外国人学校の幼児教育・保育施設が対象外となっていることと関連し、埼玉弁護士会(2月12日)、大阪弁護士会(同13日)が会長声明を、京都弁護士会が意見書(同19日)をそれぞれ発表した。
各声明、意見書は、▼日本政府に対し、各種学校の認可を受けた外国人学校の幼児教育・保育施設に対して無償化制度を適用すること、▼地方自治体に対し、国がこれらの施設を幼保無償化制度の対象とするまでの間、これらの施設またはこれらの施設に入所している幼児の保護者に対して無償化措置と同等の支援を行うこと、などを求めた。
各声明、意見書は、改正子ども・子育て支援法の条文を引用しながら、幼保無償化制度の基本理念は「全ての子どもが健やかに成長するように支援するもの」だと指摘。「多種多様な教育を行って」いるという理由で各種学校の幼児教育施設を制度の対象から除外することは,憲法14条,社会権規約2条2項,自由権規約2条1項,子どもの権利条約および人種差別撤廃条約の2条1項などの人権諸条約に反していると当局の対応を批判した。
京都弁護士会の意見書は、日本で暮らす外国ルーツの子どもにとって、ルーツの国の言語、文化に基づく幼児教育・保育を受けられる環境は、言語的な発達やアイデンティティを育むうえでかけがえのないものだと指摘。「その環境を保障することは憲法および子どもの権利条約上の国の責務である」と強調した。
有識者103人が賛同人に/100万人署名運動
朝鮮幼稚園に幼保無償化適用を求める「100万人署名運動」が各地で繰り広げられている中、日本の著名人、各分野の有識者ら103人が同運動への賛同を示している(2月27日時点)。主な賛同人は以下の通り(順不同、敬称略)。賛同人は3月以降も増えている。
雨宮処凛(作家)、アントニオ猪木(元参議院議員)、板垣竜太(同志社大学教授)、糸数慶子(元参議院議員)、鵜飼哲(一橋大学特任教授)、落合恵子(作家)、香山リカ(精神科医)、近藤幹生(白梅学園大学学長)、田中宏(一橋大学名誉教授)、外村大(東京大学教授)、中野敏男(東京外国語大学名誉教授)、丹羽雅雄(弁護士)、林典子(フォトジャーナリスト)、平岡秀夫(弁護士、元法務大臣)、前川喜平(元文部科学省事務次官)、前田朗(東京造形大学教授)、和田春樹(東京大学名誉教授)
「そのまま帰れない」―神奈川県でも署名活動
「100万人署名運動」と関連し、2月20日、神奈川県下の3つの駅前(横浜、溝ノ口、川崎)でも街頭署名活動が行われた。横浜駅前では在日朝鮮人と日本市民ら約30人が署名活動に加えてリーフレットの配布とマイクアピールを実施。朝鮮学校教員、保護者、地域の青年同盟、青年商工会のメンバーも参加した。
開始から30~40分が経った頃、下校中の神奈川朝高生らが駆け寄り署名活動に合流。新型肺炎への憂慮もあり、学校では生徒たちの街頭行動への参加を原則禁止していたが、「みんながやっている姿を見たのにそのまま帰れなくて…」と高級部3年の金悠喜さんらが加わった。リーフレットや署名用紙を分け、最後まで道行く人たちに呼びかけた。