九州で控訴審、支援団体の全国総会も
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九州無償化裁判控訴審の第3回口頭弁論が2月14日、福岡高等裁判所で行われた。翌日には朝鮮学園を支援する全国ネットワークの総会が群馬県前橋市で行われた。
文:編集部
△福岡国の暴走、司法が歯止めを
無償化裁判控訴審第3回口頭弁論
福岡高裁102号法廷で行われた九州無償化裁判控訴審の第3回口頭弁論には91席の傍聴券を求めて、約200人が足を運んだ。
法廷では無償化弁護団の安元隆治弁護士が意見陳述に立った。安元弁護士は、司法修習の同期である金敏寛弁護士に誘われたことから、「二つ返事で」弁護団に名を連ねることになったと経緯を語った。
安元弁護士は当初、自分自身も朝鮮学校に対して「よく分からなくて怖い」という偏見があったが、学校を訪問してすぐにあっさりと偏見がなくなったとのべた。その上で、前回「朝鮮学校には検証に行かない」との判断を下した裁判官に対しては、「皆さんが『行くまでもない』と判断されたのであれば、僕は、福岡高裁の裁判官の皆さんを信じたいと思います」と念押しした。
安元弁護士はさらに、これまでの無償化裁判でもっとも説得力があり、かつ理論的にも緻密なのは大阪地裁の判決だったとしながら、「本件のように国が暴走している問題こそ、司法が積極的にその役割を果たすべきです」と司法の良心に訴えた。
この日、弁護団からは新たに岡山大学法学部・堀口悟郎准教授の意見書とそれに基づいた準備書面が提出された。閉廷後の報告集会で朴憲浩弁護士が内容を解説した。
堀口准教授は意見書で、福岡地裁小倉支部が下した判決を全面的に否定。加えて朝鮮学校を無償化制度から外した処分は違法であると、①本件規程13条(適正な学校運営)適合性の判断を誤っている点、②本件規程15条(文科大臣に対して、審査会の意見を聴くことを義務付けるもの)に違反している点、③朝鮮学校を不指定処分にした理由を明らかにせず、行政手続法8条1項(行政は、申請された許認可を拒否する処分をする場合、申請者にその理由を示さなければならないとするもの)に違反している点―から主張した。
中でも①に関しては、▼「不当な支配」とは、行政や国家、政治家といった学校の外にある権力による支配を指す。そちらにペナルティを科すのではなく、朝鮮学校にペナルティを与えるのは逆転している、▼「不当な支配」は教育的観点からではなく法律的な観点で判断すべきであり、下村文科大臣(当時)には判断の裁量がない、▼歴史的に見て、朝鮮学校と総聯の間に「不当な支配」があり得るはずがない—という理由から、朝鮮学校を不指定処分にしたことは判断の誤りであって違法だと詳細に論じた。
朴弁護士は、「初めて意見書を読んだときに、『ここまで思いが伝わっているのか』とびっくりした。たくさんの参考文献にあたり、歴史から解き起こして執筆してくれた」と手ごたえを感じていた。
最後に発言した金敏寛弁護士は、次回の口頭弁論では学者による新たな意見書と準備書面を提出する旨、結審の可能性もある旨をのべ、さらなる応援、連帯を呼びかけた。
この日、報告集会終了後に「朝鮮高校無償化即時適用実現全国一斉行動に連帯する福岡県民集会」と街頭行動も実施された。
△全国各地の運動を報告、経験を共有
群馬で朝鮮学園支援全国ネット総会
朝鮮学園を支援する全国ネットワークの2019年総会が2月15日、群馬県前橋市内のホテルで行われた。総会は昨年秋に行われる予定だったが、台風の影響で延期となり、年明けの開催となった。
総会には東京、埼玉、千葉、愛知、長野、広島、福岡など日本各地の朝鮮学校支援団体の代表らが出席。各地の取り組みを報告しながら、活動の経験を共有した。
「外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク埼玉」の嶋田和彦さんは埼玉における朝鮮学校支援の取り組みについて、これまでの経緯も交えて報告。とくに、2011年から不支給となっている地元の埼玉朝鮮初中級学校に対する県の補助金の再開に向けた取り組みが重点的に話された。12年から埼玉初中アボジ会が月に1回、県に対する要請を行っており、若手を中心に研究者、市民団体、弁護士、学生、市民らが有志の会を立ち上げて活動している。このたび就任した新知事に対しても、新たなスタンスで朝鮮学校問題に取り組んでほしいと要請している。
「千葉朝鮮学校を支える県民ネットワーク」の堀川久司さんは、日朝友好千葉県の会と総聯本部が共催した今年の「新春の集い」での出来事を話した。元Jリーガーの安英学さんの講演を若い世代にも聞かせたいと、「全国制覇」もしたことのある県内のサッカー強豪校の監督に呼びかけて、当日、同高の生徒40人が千葉朝鮮初中級学校の生徒20数人とともに参加した。堀川さんは「若い人たちが多く参加したことが成果」だとし、「今後の運動でも、若い人をどう増やすかが課題」だとのべた。
無償化連絡会の長谷川和男代表は、裁判支援、補助金支給再開などに向けた東京の取り組みについて報告。世論が自分たちに十分味方になっていない状況で、「地域から陣地を形成して、朝鮮学校を知っている地域住民を増やし、朝鮮学校を支えていく仲間を作っていくたたかいが求められている」と強調した。
無償化裁判が継続中の愛知から参加した「朝鮮高校にも差別なく無償化適用を求めるネットワーク愛知」の竹内宏一さんは、最高裁への上告を経て、法廷闘争を中心に組み立ててきた従来の運動からどう転換を図っていくのか、新たなスタイルを模索する地域の取り組みについて報告した。
3月16日に控訴審が結審予定の広島から駆けつけた「民族教育の未来を考える・ネットワーク広島」の村上敏代表と広島朝鮮学園の金英雄理事長も大詰めを迎えた裁判に臨む意気込みを語った。また、昨年5月に16団体が参加して「朝鮮学校とともに歩む中国・四国・九州ネットワーク」が発足したことに触れながら、各地域の特色ある活動の経験を共有し、それぞれの地域の運動に活かしていきたいと語った。
幼保無償化問題に関しても、まずはそれぞれの地域から風穴を開けていこうというのが参加者の一致した意見として語られた。