vol.31 動機づけられる、特別な場 エルファ20年、ハルモニたちとともに
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在日一世やそれに近い世代の二世ヘの聴き取りを重ねて来た。植民地期に渡日して以来、彼彼女たちは多数者が書く「歴史」という物語の外に排除され、留め置かれてきた。多くは文字から疎外された彼彼女らにあるのは記憶だけ。それを歴史として残したかった。
そんな思いを確かなものにしてくれた場、在日コリアン生活センター『エルファ』(京都市南区)が今春で開設20年を迎えた。設立者は現在の特別顧問、鄭禧淳さん(1943年生)。岐阜県に生れ、朝鮮大学校卒業後、京都に赴任、組織活動を通して、福祉の狭間に置かれた一世の苦境を垣間見た。国籍差別の影響で無年金者も多い。非識字者には日本語だけの書類など読めない。ましてや一世は日本社会、行政への不信感が特に強い。時は介護保険制度開始の直前である。「先人が取り残される」との思いで家庭訪問を重ねた。
痛感したのは差別と貧困で文字から疎外され、高齢になった一世、とりわけ女性の置かれた「複合差別」状況だった…。(続きは月刊イオ2020年7月号に掲載)
写真説明:ルイーズ・アルブール国連人権高等弁務官(手前右)の手を離さないデイサービスの利用者(京都市南区のエルファで2004年11月10日)
写真:中山和弘
なかむら・いるそん●1969年、大阪府生まれ。立命館大学卒業。1995年毎日新聞社に入社。現在フリー。著書に「声を刻む 在日無年金訴訟をめぐる人々」(インパクト出版会)、「ルポ 京都朝鮮学校襲撃事件――〈ヘイトクライム〉に抗して」(岩波書店)、「ルポ思想としての朝鮮籍」(岩波書店)などがある。『ヒューマンライツ』(部落解放・人権研究所)の「映画を通して考える『もう一つの世界』」を連載中。