【イオ ニュース PICK UP】関東大震災から97年、都内で追悼行事
広告
関東大震災時に虐殺された朝鮮人たちを追悼する行事が関東各地で行われている。9月1日には、東京・墨田区の横網町公園で2つの行事が持たれた。
関東大震災97周年 朝鮮人犠牲者追悼式典
はじめに、同実行委員長の宮川泰彦さん(日朝協会東京都連合会 会長)が開式のことばをのべた。宮川さんは、45年以上続いているこの式典について「悲惨な歴史的事実から目を背けず、二度とこのような不幸な出来事を招かないことを誓い合うものだ」と強調した。
読経のあと、舞踊家の金順子さんが鎮魂の舞を披露し、各界より追悼の辞が読み上げられた(以下、要旨)。
田中正敬さん(関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任を問う会 事務局長)
小池都知事は、朝鮮人虐殺について「歴史家が紐解くもの」としてこれを認めず、「すべての方々への哀悼の意を表しているから個別の追悼辞は出さない」としています。朝鮮人虐殺は歴史家が紐解くまでもなく歴史的な事実です。すべての方々への哀悼の意の中に朝鮮人犠牲者が含まれているのであれば、それはどこに書かれているのでしょうか。頑なに虐殺の事実を語らない追悼とは、一体なにを目的とするものなのでしょうか。虐殺の実態を語る公文書や証言をきちんと読むこともせず、自分の主張に合わない資料は切り捨て、都合よく解釈する議論に説得力はありません。
榎本喜久治さん(亀戸事件追悼会実行委員会 副実行委員長)
朝鮮人犠牲者追悼碑は心ある人々の努力と都の行政、議会の協力で建立されました。毎年の行事には東京都知事から追悼の辞が送られ、虐殺を行った事実を認めて二度と繰り返さない決意をのべておられました。小池都知事が追悼会へのメッセージを拒否するようになってからは、一部のグループが公然と追悼への妨害を繰り返してきました。殺されたあなた方をもう一度殺そうとでもいうのでしょうか。私たちは、日本人としてできること、しなければならないことを心して、努力していくことを誓います。
梁春植さん(総聯東京都本部 副委員長)
私たちは、小池都知事に今年も式典の意義を正しく理解してもらえるよう、追悼文送付要請をしましたが、小池都知事は未だ、頑なに拒否しております。一方、新型コロナウイルス感染拡大により差別、排外主義的デマが横行するなか、会場を管理する東京都は、式典を主催する実行委員会などに対し、ここ横網町公園の使用を許可せず、排外主義を後押しするような誓約書の提出を求める暴挙に出ました。私たちが次世代に伝えなければならないことは、悲惨な虐殺の真相究明と共に、歴史から目を背けないこと、未来へ教訓を継承し、二度とこのような不幸な出来事が招かれないようにすることです。
原田あきらさん(日本共産党東京都議団)
小池都知事が追悼文を送付しないことを決めた年から始まった、式典と隣接する場所でのヘイト集会での言動には多くの都民が心を痛めています。今年8月3日、いわゆる人権尊重条例の審査会によって同団体の言動がヘイトスピーチと認定されました。この人権尊重条例の前文には、「さまざまな人権に関する不当な差別を許さない」という旨が明記されています。小池都知事と東京都がこの立場にしっかりと立ち、ヘイトスピーチに毅然とした対応をとるよう、引き続き議会からも監視を強めてまいります。日本の政治と東京都政が史実に誠実に向き合い、教訓に学び、民族差別とヘイトスピーチを許さない行動の先頭に立つよう求め、奮闘する決意です。
千坂純さん(日本平和委員会 事務局長)
関東大震災の惨禍と混乱のさなか、軍が、警察が、そして恐怖と憎悪と興奮に駆られた一般の民衆が、片っ端から朝鮮人を虐殺するという光景が、東京とその周辺のあちこちで起こりました。その事実は、軍や警察、政府、裁判所の記録、報道、当事者の証言や市民による調査記録など、あらゆる資料によって、すぐにでも確認できることです。それを否定するのは無知か、思考停止した者か、意図的に歴史の事実を隠蔽しようとする者かのいずれかです。
続いて、式典によせられた追悼のメッセージが読み上げられた。金性済さん(日本キリスト教協議会総幹事)、平野啓一郎さん(作家)、星野智幸さん(作家)ほか、今年はアメリカからもメッセージが。映画監督のオリバー・ストーンさんとアメリカン大学教授のピーター・カズニックさんが連名で思いを伝えた。
「アメリカ人は、日本の40年にわたる朝鮮半島の残酷な植民地支配について知っているかもしれませんが、1923年9月1日の関東大震災の後、流言飛語に扇動された軍、警察、民間の自警団によって、何千人もの朝鮮人、何百人もの中国人、そして日本人社会主義者が虐殺されたことを知っている人はほとんどいないでしょう。私たちは、日本人がこの恐ろしい不正義を記憶し、反省し、大虐殺の被害者を追悼する式典を行っていることを聞き、勇気づけられる思いがします。私たちは、東京都知事を含む、日本の右翼的歴史否定主義者たちが、この歴史を歪曲しようとする動きを強めていることを聞いて、驚きはしませんが、失望しています。…(中略)私たちは、皆さんのような、真実の歴史観のために闘う人々との連帯を強固にし、このような憎悪に基づく犯罪を二度と起こさせないという決意のもと、皆さんと共に被害者を追悼したいと思います」(翻訳:乗松聡子さん)
閉式の言葉のあと、献花が行われた。
関東大震災朝鮮人虐殺97周年 東京同胞追悼式
午後から執り行われた追悼式には、東京各地の総聯活動家や日本の関係者ほか、衆議院議員の初鹿明博さん、区議会議員の結柴誠一さん、新城せつこさんが参席した。
静かなソヘグム演奏のあと、参加者らは犠牲者に黙祷をささげた。
次に総聯東京都本部の高徳羽委員長が追悼の辞をのべた。高委員長は、日本政府が犠牲者と遺族らへの謝罪、補償をするどころか未だに歴史を隠蔽し歪曲しようとしていること、さらに高校無償化や幼保無償化、学生支援緊急給付金の対象からも朝鮮学校を排除していることをのべながら、根底には民族排他主義があると指摘した。
続いて、東京朝鮮人強制連行真相調査団の西澤清代表が追悼の辞を読み上げた。西澤代表は、日本が過去に犯した過ちを再び振り返りながら、今も私たちの社会に亀裂を生みだし、憎しみといがみ合いを広げようとするヘイトクライマーたちがいると指摘。そんな中、昨年には若者を中心として「1923関東朝鮮人大虐殺を記憶する行動」を立ち上げたことにふれ、「とりわけ必要なのは日本人の参加。若者の活躍に期待したい」と結んだ。
同胞追悼式には、朝鮮民主主義人民共和国と韓国からも追悼文がよせられ、朝鮮人強制連行被害者遺族協会のメッセージが代読された。韓国のキム・ホンゴル国会議員とリ・ジョンゴル民族和解協力汎国民協議会代表常任議長からのメッセージは、後日発行する資料集に掲載される(以下、被害者遺族協会からのメッセージ要旨)。
「過去に朝鮮人を虐殺しただけでは飽き足らず、時代を継いで被害者とその子孫である在日朝鮮人の人権と生活権までもを脅かしている日本政府の無分別な妄動は、全朝鮮人民の激しい怒りをかっている。どれだけ月日が流れようと、関東大震災時に犯した朝鮮人大虐殺の責任からは逃れられないということを、日本政府は認めなければならない。そして自ら真相を明らかにし、犠牲者と遺族たちに徹底的に謝罪、賠償をするべきである」
最後に、日朝友好促進東京議員連絡会の河野達男副代表が来賓のあいさつに立った。河野副代表は、「日本人の差別意識と排外主義、民族主義が、災害時に発せられたデマと扇動によって発出し、失われるはずのない命が奪われた。問題なのは国が今もこのも事実を覆い隠そうとする態度をとり続けていること。過去を直視し、しっかりと記憶を続け、歴史に真摯に向き合うことが大切だ」と教訓を噛み締めた。
式のあと、献花が行われた。
新型コロナウイルス感染拡大によって今年は一般の参加者は訪れなかったが、同日に行われた二つの追悼行事はそれぞれ動画配信によって広く共有された。(文・写真:黄理愛)