【特集】漫画 在日コリアンが描く世界
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1973年に生まれた「イプニ」、1986年から連載が始まった「大空にはばたけ」…。懐かしの漫画家たちが描いた作品から、大手出版社のコンテストで受賞、漫画家デビューへの道をつかんだ、若手漫画家たちの世界を一挙紹介。在日コリアンが描く、「漫画の世界」をお楽しみください。
“朝鮮半島に笑いの花を―” 全哲マンガを大解剖
筆者●白凛
ペク・ルン
1979年生まれ。北陸朝鮮初中級学校、愛知朝鮮中高級学校、朝鮮大学校師範教育学部美術科を卒業後、東京藝術大学美術学部卒。東京大学にて博士号取得。専攻は在日朝鮮人美術史。
在日朝鮮人最大の四コマ漫画家・全哲さん(1934―2005年)。生前に描いた膨大な作品の中から選ぶ作業は大変でしたが、「さまざまなテーマを四コマに簡潔にまとめた全哲さんの素晴らしい作品たちを、とにかく一部だけでも紹介したい」との想いで、まとめてみました。
●女性への負担を風刺、日本の軍事化も危惧
全哲さんの四コマ漫画が新聞紙面に初めて登場したのは1952年9月6日です。日本当局によって休刊させられていた「解放新聞」(「朝鮮新報」の前身)が、この年に再スタートしました。全哲さんが先輩として慕っていたのが在日美術家の蔡峻さん(1926―)です。図1は蔡氏の四コマ漫画「徐春甫一家」。…
わたし、漫画描いてます
民族教育を受けた若手漫画家の作品を、日本の漫画雑誌で読める時代になりました。注目の同胞漫画家をその独特な世界観、哲学とともに紹介します。また趣味で漫画を描く若手も紹介します。
①“別の世界へのドア”、描く
李稀玉さん(30)
毎日、片道2時間かけて通勤し働いていた会社員時代。満員電車に揺られ鬱屈した思いを、深夜ごとに白い紙へ描き落としていった。…
②正義と悪の“際”を見、人を描く
鄭大河さん(24)
「手塚賞」準入選作の「カラクリカラ」には、物之怪が登場、2作目の「天目」では、強欲が極限に及んだゆえ、自身を絶対的な存在と思いこみ、世界に破壊をもたらした人間と、その人間を試す「鍛冶の神」を登場させた。…
③「知らない存在」に気づいて—
朴玲華さん(24)
大学3年後期まで漫画家の夢に蓋をしていた朴さん。その夢を捨てきれず個人的に描いていたプロットを、「ストーリー構成」の授業を受けもつ大学教授に見せる機会が訪れた。…
④映画に負けない表情、血の通った人を描く
李民花さん(36)
幼いころからよく人生設計について思いをめぐらせていたという李さん。絵を描くことが好きで、子どもながらに絵を描く仕事で生きていくことを意識したそうだ。…
⑤“生きざま”を記録したい―
金知世さん(22)
「たかが四コマ、されど四コマ。単純な絵と簡潔な文字、起承転結のコマ割りは、子どもにも大人にも、言葉がわからない人にも伝えることができる」。こう語るのは、この4月から大阪朝鮮中高級学校で教員生活をスタートさせた金知世さん。…
インタビュー/『大空にはばたけ』作画 崔春龍さん
あきらめない心、サッカー少年たちへエール
「朝鮮新報」で1986年から2001年まで断続的に連載された人気漫画《창공에 나래쳐라》(『大空にはばたけ』)。ある弱小サッカー部が「コマチュック大会」(在日朝鮮初級学校中央サッカー大会)で躍進する姿を描いたスポーツ漫画の金字塔はいかにして生まれたのか。作画担当の崔春龍さん(65)に話を聞いた。
●自分の力を試すチャンス
―崔さんが漫画を描き始めたきっかけは何だったのでしょうか。
漫画を専門的に学んだことはありません。絵を描くのは得意でしたが、まったくの我流です。朝鮮学校初級部から高級部までサッカーに情熱を傾けるかたわら、時間があれば趣味で絵を描いていました。
1974年に大阪朝鮮高級学校を卒業し、在日本朝鮮青年同盟中央本部で朝鮮学校少年団の児童・生徒を対象にした隔週紙「朝鮮少年」の編集に携わることに。この時初めて本格的に漫画を描きます。…
以上は特集からの抜粋になります。全文ご覧になるには本誌をご覧ください。