朝鮮学校無償化訴訟広島弁護団 声明【2020年10月16日】
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本日、広島高裁第2部(三木昌之裁判長)は、学校法人広島朝鮮学園を高校無償化の対象としないとした文部科学大臣の判断の違法性を争ってきた裁判で、控訴人側敗訴の判決を言い渡した。
この裁判は、他の外国人学校が就学支援金の支給対象となるなかで、朝鮮学校及び朝鮮学校に通う子どもたちのみが政治的理由により就学支援金の支給対象外とされたことの是正を求めるものであり、広島地裁が朝鮮学校及び朝鮮学校に通う子どもたちの訴えを棄却した裁判の控訴審である。
原審の広島地裁は、原告側が申請した証人尋問、本人尋問をすべて却下し、不当判決を言い渡した。一方、控訴審では、原審が却下した証人尋問、本人尋問を実施するほか、裁判所から積極的な求釈明がなされるなどしたが、結局、原審の判断を追認する結果となった。
とりわけ、控訴審では、原審での主張に加えて、朝鮮学校の無償化外しに至る政治的背景、何ら責められる謂れのない子どもらの権利が侵害されていることの問題、無償化から外す理由とされた本件規程13条の「授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適正に行わなければならない」との文言は、指定時の基準を定めたものとはいえず、その法的性質論についての主張を展開してきた。
しかし今回の判決は、原判決を追認し、規程13条の適合性に関する文科大臣の判断に裁量の濫用、逸脱はないと判断した。そして、控訴人が強く求めた朝鮮学校の指定の根拠となる規定ハを削除したことについての違法性について審査すらしなかった。また、本件規程13条について指定時の基準たりえないとしたことについても判断を回避し、十分な理由を述べなかった。
文科大臣はハ規定そのものを削除したが、無償化法1条の「教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与」するという目的に完全に反し、それと同時に、朝鮮学校を永久に指定しないという明確な差別的意図の現れである。そのような文科大臣の行為を容認する判決は、少数者の人権を守るという役割を放棄したという他なく、弁護団としては、裁判所の判断を到底受け入れることはできない。
文部科学大臣が朝鮮学校を無償化から外したことを契機に、広島県と広島市は、朝鮮学校に対する補助金を停止した。また、朝鮮幼稚園は各種学校であることを理由に幼保無償化から適用除外され、さらに朝鮮大学校の学生は、学生支援緊急給付金からの支給対象からも排除された。このような一連の流れは、在日コリアンの子どもらに対する差別的政策と言わざるを得ない。今回の判決は、このような差別的政策を追認するものと言わざるを得ない。
国は、多様性を認め、違いをもった人が互いに尊重することができる社会を目指し、ヘイトスピーチを規制する一方で、公然と朝鮮学校差別をおこない、自治体もそれにならうという動きが広がっている。教育行政が差別的政策を行うことは許されない。国際連合の3つの員会も、朝鮮学校の生徒を高校無償化から除外することについて、懸念を示し、あるいは、差別であると指摘している。
弁護団としては、朝鮮学校の高校無償化実現へ向けて、誤った判決を是正すべく、最後まで戦う。