【イオ ニュース PICK UP】裁判闘争が明らかにした差別の根源/「火曜アクション」集会
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11月21日、キャンパスプラザ京都にて、「『高校無償化』10年の闘い~改めて朝鮮学校除外問題について考える~」が行われた。「朝鮮学校への『高校無償化』『幼保無償化』適用を求める火曜アクションin京都」(以下、「火曜アクション」)主催の同集会は、高校無償化の裁判闘争が佳境を迎えた今、改めて高校無償化制度から朝鮮学校除外問題を考え、行動していく契機にするべく企画され、YouTubeにて全国にライブ配信された。
まずはじめに、大阪産業大学教授であり、朝鮮高級学校無償化適用を求める連絡会・大阪の共同代表を務める藤永壯さんが、「裁判闘争が明らかにしたもの-高校無償化排除10年を振り返って-」と題した基調講演を行った。
藤永さんは、高校無償化制度から朝鮮学校を除外した根本には、在日朝鮮人の民族教育に対する日本国家の認識に問題があると指摘。今日まで続く在日朝鮮人や民族教育に対する差別意識の根源を紐解きながら、裁判闘争から見えた問題点をあげた。以下にその内容をまとめる。
植民地時代から「不逞鮮人」という言葉があったように、抗日運動や独立運動を警戒した政府が、「反抗と暴力が特徴」という「厄介な朝鮮人像」を作りあげ、このような警戒意識、差別意識が日本の国家権力、日本社会の人々に根深く刻まれた。植民地時代は、抗日運動への警戒という側面から、解放後はここに「反共」という考えが相まって、朝鮮学校に対する敵視政策が打ち出されてきた。また、日韓基本条約(1965年)のなかで、韓国が日本側に、韓国人(韓国籍)の児童・生徒への配慮を求めたことを口実に、在日朝鮮人の民族教育を管理していく方針が出てきた。
すなわち、日本当局は当時も、植民地支配の暴力性に対する反省、在日朝鮮人による民族のアイデンティティの回復というような営みを受け入れようとする発想はなく、戦前の発想をそのまま引き継ぎ、弾圧の機会をうかがっていた状況と言える。
藤永さんは続いて、高校無償化制度から朝鮮学校が除外されて10年間、今日に至るまでの裁判闘争を振り返り、次のように語った。
そもそも朝鮮学校は、文部科学省令による外国人学校の3類型のうち、規定(ハ)の基準をクリアしており、文部科学省も朝鮮学校に無償化を適用するつもりで準備をしていたにも関わらず、朝鮮半島情勢を理由に、当時野党の自民党政権から根拠基準である規定(ハ)の削除を求める声があがり、民主党政権が終わるまで保留状態に置かれた。この発想は、65年、日韓基本条約が締結された時点で内閣調査室が、朝鮮学校を教育問題ではなく、治安問題として処理するという公安的な感覚がそのまま受け継がれていると言える。
今日に至るまで、各地域で行われた裁判では、身も蓋もない根拠規定の削除を堂々と理由とした、あまりに露骨な排除方針、「教育の機会均等」を謳った高校無償化制度の精神に反する判決が下されている。また、個人崇拝などの「不当な支配論」を持ち出し、教育問題を治安問題にすり替え、明らかに政治外交的理由で朝鮮学校を無償化制度から除外し続けている。しかし、国際的な人権機関は、一貫して「朝鮮学校に対して無償化制度を適用すべき」と勧告をしており、日本政府の個人崇拝批判は通用しない。
藤永さんは、「この問題が朝鮮学校の問題ではなく、日本国家、日本社会のあり方の問題」であるとし、「朝鮮学校に無償化制度を適用するということは国民の理解を得られない」とした下村博文文科大臣の発言、「国民の租税負担のもとに実施される無償化制度の対象にはできない」とした名古屋地裁判決などの「国民至上」の発想が、「思想的要素のある民族教育権を侵害している」と話した。また、朝鮮に限らず、「恣意的に反日的である、時の国家権力に反抗する存在であると見なされたものは、このような形で排除されていく。これが今の日本の形」だとし、「高校無償化問題や幼保無償化問題、朝鮮大学校が学生支援緊急給付金の対象から除外されている問題など、民族教育とともに歩む闘いは、これからが真価を問われる」と力を込めた。
続いて、「広島無償化裁判を支援する会」事務局の権鉉基さん、九州無償化裁判弁護団の朴憲浩弁護士が、各裁判の現状とこれからの活動について報告を行った。最後に、京都朝鮮中高級学校卒業生や「朝鮮学校と民族学校の発展を目指す会・京滋(こっぽんおり)」事務局を含めた火曜アクションの参加者がアピールをした。
集会では、勝利を勝ち取るまでみなが連帯、連結し、闘っていこうと強く呼びかけられた。
※学習会のアーカイブは11月30日まで視聴可能です。視聴を希望される方は火曜アクション事務局までご連絡ください。(https://www.facebook.com/kayouaction/)
(文:朴明蘭、写真:「火曜アクション」提供)