【イオ ニュース PICK UP】学生支援給付金、幼保無償化で要望 /朝大副学長、朝鮮幼稚園保護者ら
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●大学生、深刻な窮状
「学びの継続」のための学生支援緊急給付金から朝鮮大学校が除外されていること、幼保無償化制度から朝鮮幼稚園が除外されていることと関連し、朴俊泳・朝大副学長をはじめとする教職員と学生、保護者たちが12月23日、東京・永田町の参議院議員会館を訪れ、内閣府、文部科学省、厚生労働省の担当者に要望書を手渡し、早急な適用を求めた。
要請の場は、立憲民主党の「外国人受け入れ制度及び多文化共生社会のあり方に関するPT(プロジェクトチーム)」と文部科学部会の所属議員が共同で主催。立憲民主党の中川正春衆議院議員、石橋通宏、水岡俊一、岸まきこ、石川大我参議院議員らが同席した。
学生支援緊急給付金は、新型コロナウイルス感染症拡大による影響で、世帯収入やアルバイトが激減し、学びの継続の危機を抱える状況を踏まえた高等教育機関への支援制度。国公私立大学・短大・高専・専門学校・日本語教育機関に学ぶ43万人を対象にしているものの、各種学校認可を受けた朝大は除外されている。住民税非課税世帯の学生は20万円、上記以外の学生は10万円が支給される。
席上、朴俊泳副学長は、金順彦・東京朝鮮学園理事長、韓東成・朝鮮大学校学長、李舜・朝大学生委員会委員長の三者による要望書を提出した。
朴副学長は、「日本政府が今年5月に創設した緊急給付金の給付対象に株式会社・財団法人・個人などが設置した日本語教育機関も含まれているにも関わらず、コロナ禍という非常時にまで各種学校だからという形式論で除外するのは差別だ」と指摘。「コロナ禍が学びの条件を揺さぶっている状況において、公的補助が適用されない本学生の状況はより深刻で、今年度以降、家庭の収入源やアルバイトの収入減により、学納金の滞納が増えており、大学生活を続けるか否かを煩悶する学生もいる」と窮状を伝えた。
また、11月27日の衆議院文部科学委員会において、萩生田光一文科大臣がのべた「何があっても…学生の皆さんが今回のコロナで学校をあきらめる、学修をあきらめることがないように、その対応はしっかりやっていく」との言葉に触れ、「困窮学生への救済策が新たに講じられる際、本学の学生を対象に含めるよう強く要請します。学生たちがこれ以上、差別されることがないよう公平な処遇を求めます」とのべた。
続いて、朝鮮大学校の学生は、「権利が否定され、命が軽視されていると感じている。また、高校無償化に続き、さらに両親に負担がかかると思うと胸が痛む。民族教育を受ける権利は当然だと思う。民族教育に正面から向き合ってほしい」と訴えた。
●文科省、立場くずさず
要望に対し、文科省担当者は「朝大を外そうと意図したわけではない。制度設計の中で、看護大学校や水産大学校も外されている」と従来の立場を崩さなかった。
この回答を受け、朝大の李柄輝教員は、「施策の趣旨は、高等教育者に対して学びの継続を後押しするというものです。よって、朝大が高等教育機関か否かに照準を合わせるべきです。当事者がこれほど強く何度も要請しているのに、なぜこれが通らないのかという点について、答えをいただきたい」と訴えた。
在日朝鮮人の歴史的経緯についても触れた。
「朝大に通う学生は、日本に生まれた特別永住者がほぼすべてです。
(日本の植民地支配によって)日本に残らざるを得なかった在日朝鮮人の教育問題は本来、日本国家が担うべきだが、当事者の努力で担われてきた。公的支援がないところに学費の滞納金は深刻で、そうすると教員の人件費などにもしわ寄せがいき、結局教育の質が下がっていく。危機の時は、弱いところにしわ寄せがいく。もう一度文科省内で検討してほしい」
石橋通宏参議院議員は、「緊急給付金の追加給付に関する文科省の調査も、給付金の対象外となった学生については行われていない。これこそあってはならないし、差別ではないか。朝大が高等教育機関として認知されていることに、文科省は何ら答えていない」と無責任な対応を非難した。
●幼保無償化についても要望
幼保無償化制度から朝鮮幼稚園が排除されている問題についても、当事者や日本市民の要望が続いた。
保護者の文泰勝さんは、①各種学校も無償化対象と認め、朝鮮幼稚園のすべての園児たちの保育料を無償化すること、②各種学校の幼児教育・保育施設を、幼児教育類似施設等への新たな支援の対象として認めること―を求めた菅義偉内閣総理大臣宛ての要望書を手渡した。
西東京朝鮮第1初中級学校幼稚班からは、保護者の黄琴実さん、主任の方香織さんが発言。
早朝、86歳の祖母に子どもを預けて国会を訪れた黄さんは、負担を承知で来春に第三子も朝鮮幼稚班に通わせる予定だ。「先日、次女がチマチョゴリを着て、ひいおばあちゃんの前で、朝鮮のあいさつをしてくれた。その姿に、また頑張ろうという気持ちになりました。国のトップが差別するような教育を受けさせることはできない。あたり前に学ぶ権利がほしい」と切願した。