【イオ ニュース PICK UP】「差別生まれている」と一蹴/「朝鮮大学校の学生に『学生支援緊急給付金』の公平な給付を求める集会」
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新型コロナウイルス感染拡大による救済策として日本政府が打ち出した「『学びの継続』のための学生支援緊急給付金」(以下、「学生支援緊急給付金」)制度の対象から朝鮮大学校(東京都小平市)が除外されていることと関連し、11月30日、東京・永田町の衆議院第一議員会館で立憲民主党「外国人受け入れ制度及び多文化共生社会のあり方に関するPT」主催の当事者ヒアリング「朝鮮大学校の学生に『学生支援緊急給付金』の公平な給付を求める集会」が行われ、同党の議員、朝鮮大学校の教職員と学生、文部科学省職員が参加した。
集会では、朝鮮学園を支援する全国ネットワーク、「朝鮮大学校の学生に『学生支援緊急給付金』の公平な給付を求める大学教職員声明」賛同人、「在日外国人学生の学びの権利を考える会」(学生団体)との3団体連名による要請書、6・15共同宣言実践南側委員会、コリア国際平和フォーラム(KIPF)などの5団体が共同で提起した国際キャンペーンを通じ集まった939団体、1万1531人の賛同による「朝鮮学校への差別中止を求める国際宣言」が文部科学省に手渡された。
「PT」を代表してあいさつした中川正春衆議院議員は、学生支援緊急給付金の対象から各種学校が抜けている問題と同時に、民族教育を認めようとしない日本政府、日本社会の姿勢に対して異議を唱えた。
続いて、大学教職員声明の呼びかけ人代表である同志社大学の板垣竜太教授が基調報告を行った。
板垣教授は、朝鮮大学生が国家資格や大学院入学の試験資格を持つこと、スポーツ分野でも関東リーグなどに参加しているなど、十分に高等教育機関として見てとれることに言及。そのうえで学生支援緊急給付金は、高等教育機関とも一括できないような日本語教育機関や、多様な設置形態をもっているような日本の教育機関も包摂し、これまでの支援制度よりも幅広くカバーしている制度でありがながらも朝大を除外している行政上の矛盾について指摘した。
また、「朝鮮大学校が各種学校であること、あるいは専修学校でないこと自体が弾圧と抵抗の産物」だとし、「『各種学校は自動車学校などいろいろある』という論理は歴史的見地から成立しない。政府与党は、植民地期や冷戦期の治安管理的な思考、外交的な思考で考えず、人道的な見地、歴史的な実態と実績に則した見地から朝鮮学校を緊急支援制度の対象に含めてほしい」と文科省職員に呼びかけた。
ヒアリングの場で発言した朝鮮大学校の李さんは、人種や民族を選ばずすべての人に振りかかるコロナ禍でさえ朝鮮学校が差別されたことに、「失望と怒り」をあらわにした。5月に行われた要請活動を通じて出会った外国人留学生とともに声をあげ、署名活動などに励むも、7月の要請活動の場での「引いた線の外にある学びを否定しているつもりはないが、現在のスキームが適用できる最大限の範囲が今の対象だ」という文科省の発言に、「なぜ私たちは困窮度合いではなく、異なる基準で線の外に放り出されているのか」と異議を唱えた。
大学教員や、当事者たちの必死の訴えが続くも、文部科学省の西条正明・高等教育局学生・留学生課長は、「学生支援緊急給付金制度を打ち出すにあたり、極力対象を広げようと考えた。排除、差別を考えてこの制度を作ったわけではない」とのべるのみ。
この発言を受け、ルポライターの鎌田慧さんは、「排除してないと言っても、結果から差別が生まれている」と一蹴。日本社会が植民地支配とその後の経済復興について認識をせず、平然と差別やヘイトスピーチを行いながらも、差別に気づいていない現状が「国際的に恥ずかしい」と警鐘を鳴らした。
キャスター兼ジャーナリストの堀潤さんは、高校無償化制度をはじめ教育支援制度から朝鮮学校の幼児や生徒、学生が除外されていることについて、「大人たちが解決できない政治の問題を、どうして子どもたちに背負わせるのか」と問いかけ、「朝鮮学校の学生が対象じゃないということを、他の学生たちがまざまざと見せられた時、大人たちが制度的に作った『分断』を子どもたちに教えることになる。改善するための知恵を出し合う場を設けていきませんか」と強く訴えた。
ほかにも、リモートや書面を含め、朝鮮大学校の学生、教員、朝鮮幼稚園の保護者や日本の大学教職員、各界の識者が異を唱え、学生支援緊急給付金の公平な支給を強く求めた。
(文:朴明蘭、写真:朝鮮新報・盧琴順)