“裁判後”の運動を見すえて、各地で集会
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この間の朝鮮高校無償化裁判を総括し、裁判後の運動を展望する集会が2020年11月、愛知、東京、京都、大阪で相次いで開かれた。
△東京
官民ヘイトの中でどう闘うか
朝鮮学校差別反対集会
△愛知
〝アフター裁判〟を展望する
無償化裁判総括集会
約7年8ヵ月におよぶ愛知無償化裁判を振り返る総括集会が11月12日、ウインク愛知で行われた(左ページ写真上、主催=朝鮮学校にも差別なく無償化適用を求めるネットワーク愛知)。
ネットワーク愛知の原科浩共同代表は、たたかいが新たなステージに入ったとした上で、この期間に勝ち得たものと乗り越えるべき課題を改めて確認しようと呼びかけた。
愛知無償化弁護団事務局長の裵明玉弁護士は裁判運動を振り返りながら、「日本の識者、専門家、支援者や韓国の同胞たちとつながり、さらに文科省の元官僚でありながら声を上げる人も出てきた。それは裁判があったからだ」とのべた。
ネットワーク愛知の事務局長や共同代表を務めた山本かほりさんは、「10年間の『支援』を振り返って」というタイトルで発表に立ち、「私たちが今一度考えるべきなのは、日本社会に生きる私たちに染みついた『北朝鮮』に対する眼差しだ」と発言。この問いなしでは無償化排除という差別問題の根本を⾒ることができないとしながら、判決が突きつけてきた課題に向き合いつつ、これからも共に活動していくことを表明した。
その後も、愛知朝鮮中高級学校卒業生、教員、保護者、弁護士、支援者などから発言があったほか、朝鮮民主主義人民共和国と韓国から送られた連帯メッセージも代読された。ネットワーク愛知は今後、団体名を「民族教育の未来をともにつくるネットワーク愛知・ととりの会」に変更し、引き続き活動していく予定だ。
△京都
高校無償化排除10年を振り返る
火曜アクション主催で集会
11月21日、キャンパスプラザ京都にて、「朝鮮学校への『高校無償化』『幼保無償化』適用を求める火曜アクションin京都」(以下、火曜アクション)主催の集会「『高校無償化』10年の闘い―改めて朝鮮学校除外問題について考える―」が行われた。集会では、朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪の共同代表を務める藤永壯・大阪産業大学教授が、「裁判闘争が明らかにしたもの―高校無償化排除10年を振り返って―」と題した基調講演を行った(写真左)。
藤永さんは、「日本国家の民族教育に対する認識に根本的な問題がある」とし、戦前から今日まで連綿と続く朝鮮学校への弾圧を実例とともに解説したうえで、「政治外交的な理由で、公安的な感覚で取り締まるということが、植民地時代から受け継がれている。『朝鮮人は信用できない』ということを裁判所が堂々と認定した」と指摘した。また、「朝鮮学校に無償化制度を適用するということは国民の理解を得られない」(下村博文文科大臣)、「国民の租税負担のもとに実施される無償化制度の対象にはできない」(名古屋地裁判決)と、「国民」を全面に出すような主張についても、教育基本法の第1条に「心身ともに健康な国民の育成」と書かれていることをあげ、「外国人に対する教育の問題は、教育基本法にコミットしているし、国民教育のために定められた法律である」と一蹴し、「民族教育とともに歩む闘いは、これからが真価を問われる」とのべた。
続いて、裁判が続いている広島と福岡から広島無償化裁判を支援する会の事務局長を務める権鉉基さん、九州無償化弁護団の朴憲浩弁護士がそれぞれの裁判の現状とこれからの活動について報告した。
△大阪
植民地主義と裁判闘争
無償化連絡会大阪連続学習会
朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪(無償化連絡会・大阪)が主催する第3回オンライン学習会「再生産される植民地主義と朝鮮学校の裁判闘争」が11月29日に行われた。パネリストとして板垣竜太・同志社大学教授、駒込武・京都大学教授、河かおる・滋賀県立大学准教授の3人が登場した。
「京都と大阪の裁判から見えてくるもの」というテーマで報告した板垣教授は、京都朝鮮学校襲撃事件裁判の確定判決に民族教育権という表現はなかったが、日々の民族教育の実践を通じて歴史的に形成された社会性(社会的評価、社会環境)が法的に保護されるべきものとして認定されるなど民族教育権の萌芽が見て取れると評価した。大阪朝鮮高校無償化裁判の地裁判決も、朝鮮学校が「自主的民族教育施設」であるとの観点から総聯と朝鮮学校の関係を歴史的に評価しているとのべた。
板垣教授は、日本における公教育は事実上の国民教育になっており、外国人教育は公教育の制度外に置かれ、民族教育が制度的に概念化されていない、などと指摘。朝鮮学校は外国人学校としての性格、民族学校としての性格、公教育としての性格という3つの性格を有しており、3つの性格のうちでどれか一つの性格に寄せるというのではなく、「在日朝鮮人の学校」というしかない歴史性に立脚した民族教育権の構築が必要だと強調した。
続いて駒込武教授が「朝鮮学校にとって『公共性』とはなにか―大阪朝鮮学園補助金訴訟から考える」と題して、河かおる准教授が「幼保無償化問題 滋賀県の外国人学校・保育所の事例」というテーマでそれぞれ発言した。