朝鮮幼稚園はどうなるの? /幼保無償化除外問題の現在地
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2019年10月から実施された幼保無償化制度から、朝鮮学校を含む各種学校の外国人学校や一部の幼児教育類似施設は除外されたまま。これらの施設が対象となるためには、「改正子ども・子育て支援法」の改定が必要だ。法律改定のハードルは依然として高いが、一方でこの間の当事者たちの署名や声上げによって、日本政府は21年度から対象外施設への新たな「支援策」を行うと表明した。
「支援策」の具体的な中身や対象を定めるため、文部科学省は2020年3月から「調査事業」の準備を開始(正式名称は「地域における小学校就学前の子供を対象とした多様な集団活動等への支援の在り方に関する調査事業」)。といっても実施するのは国ではなく、各自治体に「調査事業」の要領を送り、手上げした自治体が行うよう委託した形だ。
調査する内容は、▼保護者への意識調査、▼施設が安全面で最低限の基準をクリアしているかの調査、▼施設の開所時間なども含めた活動内容や取り組みの把握―など。この「手上げ」形式によって、表面的には冒頭で上げた対象外施設も「支援策」の対象には含まれる可能性が生じた。しかし、新たな問題も浮上している。
「調査事業」の対象施設の前提条件には、「現在自治体がなんらかの金銭的支援を行っていること」とある。つまり、補助金などの支援があるかないかで「調査事業」の対象となるかならないかも新たに線引きされてしまったのである。高校無償化除外という国の差別政策に連動する形で朝鮮学校に対する補助金を停止する自治体が続出している中、不平等を固定化させてしまう設計だった。
一方で、「調査事業」には朝鮮学校がある18の自治体が手上げ。審査によってすべてが委託自治体に含まれはしなかったものの、13の自治体による「調査事業」が認められ、文科省は「支援策」の対象施設として想定されるタイプに、「外国人等を主たる対象とする施設」を新たに加えた。これは一つの前進とみられる。
今後の運動のポイントは、①すべての朝鮮幼稚園が「支援策」の対象となるよう声を上げていくこと、②朝鮮学校への補助金を停止している自治体に対して支給復活を求める運動を展開すること、③朝鮮幼稚園の園児が住んでいる自治体に対して、独自の支援策の模索や、国への働きかけを求めること、④民族教育への理解と支援につながる世論を広げること―となる。
幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会は現在、2つの署名を実施している。そのうち、新たな「支援策」にすべての外国人学校幼稚園を対象にするよう求める署名は3月15日が締め切りだ。引き続き、多くの拡散と賛同が求められている。
【参照:『조선녀성』2020秋・冬号「幼保無償化除外問題 巻き返した今がふんばりどころ」(文責=幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会・宋恵淑)】
“すべての子どもたち”への無償化を
施設で線を引く必要まったくない
小林成親 ●森のようちえん全国ネットワーク連盟理事
…対象外のまま月日が経つと、「幼児教育はそもそも無償だ」という意識が広がってしまうため、いくら自分たちの保育に自信を持っていても、保護者側からすると心理的なハードルが上がってしまう可能性もあります。
私たちは学習会をしたり、内閣府に要望書を届けたり、新たに設けられた調査事業について意見を伝えたりと、さまざまな活動を続けてきました。その結果、19年1月には自民党の衆参議員17人からなる「森のようちえん振興議員連盟」が発足。
2020年11月、議員連盟が文科省に提言書を提出する場に同席して、私たちも要望書と2万2725筆の署名を萩生田文科大臣に手渡すことができました。…
制度をつくる側の無理解、改善を
山家ヤスエ ●エスコーラ・ネクター講師
…普段から、制度を決める人たちの理解を得る方が難しいとの実感があります。幼保無償化も、はじめから外国人の存在を想定していないまま組まれた制度のように感じます。こちらはどうやって枠組みに入れるか知りたいのに、行政から「知らない」と返答があったことに衝撃を受けました。
いちばん支援を必要とする学校に支援が行き届いていない。それは、本来あてはまる人たちに分かりやすい形で情報が開示されていない状況を見ても明らかです。…