vol.3 恐るべし、昆虫の王様
広告
恐るべし、昆虫の王様(東京朝鮮第6幼稚園 張淑瑛先生)
2020年の夏を目前にしたある日、保護者からカブトムシを頂いた。その頃、子どもたちは、朝鮮大学校で作られた「昆虫体操」を毎日のように踊り、虫への関心も高まっていたので、良いタイミングだと思い、責任をもって育てる覚悟を決めた。オス5匹に、メス2匹。最初は怖がっていた子たちも、触れる子を見るや、負けじと触るようになり、いつの間にか昆虫が「身近なもの」「興味の対象」へとなっていった。
毎朝、当番の子が餌のゼリーを交換する。ゼリーも保護者からいただいたものだ。夜行性のカブトムシも、朝一のゼリーを堪能しようと地上で待ち構えているので、苦手な子はびくびくしながら交換する。当番の子は、何種類もの味を、自分が食べる時と同じように悩みながら選んでいた。
そんなある日、事件が起きた。朝の職員会議で次のような報告があった。「昨夜(午前3時)、学校の警報が作動し、警備員が出動されました。…原因はカブトムシの脱走です」。
完全に昆虫の王様をなめていた。昼間はのんびりとしていたカブトムシが、夜になると虫かごの蓋をこじ開け、警備の網に引っかかるなんて…。警備報告書には「カブトムシを虫かごに戻しました。」とあるが、確認すると5匹しかいない。どこから出てくるかわからないカブトムシカップルに、学校中が緊張状態となった。音楽デッキの裏から出てきた時には、言葉も通じないかれらを相手に叱咤した。
そんな「問題虫」なカブトムシだが、卵を産み、卵が孵り、今は幼虫が土の中ですくすくと成長している。どんどん大きくなる幼虫に、また恐怖心を抱き始めた子どもたちだが、今年の夏には昆虫ブームが再来してくれることを願う。 (張先生の回はおわり)

イラスト:池貞淑