高校無償化裁判 広島、最高裁が上告棄却
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全国5訴訟終結、朝鮮学校側の敗訴確定
国が朝鮮学校を高校無償化制度の適用対象から外したのは違法だとして、広島朝鮮初中高級学校(広島市)を運営する学校法人広島朝鮮学園と同校卒業生110人(提訴当時)が2013年8月1日に国に対して不指定処分の取り消しや損害賠償を求めた訴訟(以下、広島無償化裁判)で、最高裁第三小法廷(林道晴裁判長)は学校側の上告を棄却し、上告受理申立ても受理しないとする決定を下した。決定は7月27日付。
これで、高校無償化制度からの広島初中高除外を「適法」と判断した一審判決(17年7月19日)および二審判決(20年10月16日)が確定した。同時に、13年1月24日から日本全国5ヵ所で行われてきた一連の高校無償化裁判は今回の広島の結果をもって、原告である朝鮮学校側の敗訴で終結した。
上告棄却の決定を受けて、弁護団と広島朝鮮学園は7月29日、それぞれ声明を発表した。弁護団声明は、「国は、朝鮮高級学校には、朝鮮総聯の不当な支配が及んでいると強弁し、広島地裁、広島高裁は、ハ規定削除の違法性の判断すらせず、安易に国の主張を認め、最高裁もそれに追従した」と司法の判断を批判。続けて、「朝鮮高級学校を無償化の対象としなかったことは、現在に至っても国が差別的な政策をとっていることの表れである。人権を護る最後の砦といわれる裁判所がこのような差別を正さなかったことは、絶望でしかない」としながら、最高裁のこのような判断によって「在日朝鮮人に対するさらなる差別が助長されるのではないかと強く危惧する」と懸念を表明した。広島朝鮮学園は、裁判は終わったが、「今後も高校無償化制度を朝鮮高級学校に適用させるための取り組みを続けていく」とした。
国の差別追認した司法
2010年4月、「すべての高校生に学ぶ機会を保障する」ことを目的に高校無償化制度が施行された。その制定過程を見ると、朝鮮高級学校も就学支援金の支給対象とするように制度設計されていることは明らかだったが、当時の民主党政権は制度施行後も外国人学校の中で朝鮮高校だけを教育とは関係のない政治外交的理由で審査を引き延ばし続けた。その後、誕生した自民党政権は13年2月20日、朝鮮学校を制度の対象に指定する根拠となる決まり「規定ハ」を省令から削除し、朝高を完全に除外した。
就学支援金受給の道を絶たれた日本各地の朝鮮高校生と学校を運営する朝鮮学園は国を相手取って裁判を起こす。13年1月の大阪、愛知での提訴を皮切りに、広島、九州(福岡)、東京の日本全国5ヵ所で朝鮮高級学校の高校無償化制度からの除外の違法性を問うた。
大阪では一審で、大阪朝鮮高級学校を制度の対象から外した国の対応は違法、無効と認定し、不指定処分を取り消して同校を対象に指定するよう命じる原告全面勝訴判決(17年7月28日)が下されたが、ほかの訴訟では国の朝鮮学校差別を追認する判決が続いた。唯一、一審で勝訴判決が出た大阪でも、控訴審では原告逆転敗訴の判決が下された。最高裁も東京と大阪訴訟で原告側の上告を棄却(19年8月27日付)したのに続き、翌年9月2日には愛知で、今年5月27日には九州訴訟で上告を棄却した。
高校無償化制度の施行および朝鮮高校の除外から11年、提訴から8年半。司法に救済を求めた原告の朝鮮高校生の訴えに、大阪地裁を除いて裁判所が応えることはついぞなかった。