【イオ ニュース PICK UP】「真実解明あきらめない」 ウィシュマさん死亡事件、来日中の妹が無念の帰国
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今年3月、名古屋出入国管理局の収容施設で死亡したウィシュマ・サンダマリさん(当時33)の妹で、5月から日本に滞在中のワヨミさんが同行していた夫とともにスリランカへ帰国することになった。ワヨミさんは23日夜に日本を発つ予定。
これと関連し、ワヨミさんら遺族、代理人弁護士が21日、東京都・永田町の参議院議員会館内で記者会見を開いた。
会見の冒頭、指宿昭一弁護士から概要の説明があった。指宿弁護士はワヨミさんが帰国を決めた理由について、①ウィシュマさんの収容中のようすを撮影したビデオ映像を遺族に見せる際、代理人の立会いを許さないなどの入管の不誠実な対応によって心身ともに大きなストレスを受け、このまま日本に滞在し続けることが困難になった、②ウィシュマさん死亡のショックでスリランカにいる母親の健康がすぐれない状態が続いている、③ワヨミさんと一緒に来日した夫の仕事の都合、の3点を挙げた。
指宿弁護士は、「ワヨミさんには真相解明がなされるまで日本に残りたいという意思があったが、それが果たされないまま帰国しないといけなくなったことはひとえに入管の不誠実な対応が原因だ」と入管に対する抗議の意を表明した。
続いてワヨミさん本人が発言した。ワヨミさんは、「入管で見た姉のビデオ映像が何度も思い出され、夜も眠れないくらい大きな精神的ストレスを感じている」と現在の状態を説明。冷たい床に放置されたウィシュマさんが入管職員に23回も助けを求めたのに、職員たちがばかにしたような対応を取った場面などを挙げながら、「姉が弱っていく姿、入管職員の対応のひどさの両方にショックを受けた」と話した。入管側の対応については「不誠実」だと非難。「全体の映像の開示を求めたが一部しか見せてくれない」「姉の死亡の責任を受け止めていない」「責任逃れの言動に怒りを感じる」などとのべた。
代理人弁護士によると、遺族側は前回見られなかったビデオの残りの映像を視聴するために9月10日、入管を訪れたが、入管側が代理人の立会いを認めなかったので、映像を見ずに席を立った。代理人立会いの下で残りの映像を見せること、2週間分のすべての映像の開示を求めているが、現在まで回答がない。また、入管側は遺族が帰国するまでに調査報告書のシンハラ語(スリランカの公用語)訳を渡すとしていたが、現時点で渡されておらず、渡すのがいつになるのかについても説明を受けていないという。
ワヨミさんは会見の席上、「日本に住むみなさんが映像を見れば、入管が収容者をどのように扱っているのか、姉にどのようなひどい行為をしたのかわかる」とすべてのビデオ映像を公開する意義について強調した。続けて、「今後このようなことが誰の身にも起きないような入管の制度をつくってほしい」と訴えた。支援者らに対しても「今回、姉の死の真相を解明するためにたたかってくれたように、今後もたたかい続けてください」と呼びかけた。
帰国後、ワヨミさんは母親に監視カメラ映像の内容などについて説明するという。
ワヨミさんは急きょ帰国することになったことに無念さをにじませながらも、「姉の死の真相究明をあきらめたわけではない。帰国後も自分ができることやっていきたい。今後、必要があればまた来日する」とのべた。
一方、もう一人の妹ポールニマさんはこのまま日本に滞在し、代理人立会いの下で残りのビデオ映像の視聴、すべての映像の開示、真相究明を引き続き求めていくという。(文・写真:李相英)