アートを媒介に、交差生む明かり/大阪・東成「アトリエトゥン」
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創作のための〝サードプレイス〟があったら…。そんな憧れが形になった。大阪市東成区・今里にある「アトリエトゥン」だ。
トゥンは朝鮮語で등(灯・燈)と書き、明かりという意味を持つ。自分たちの制作・活動拠点として、路地裏の民家に新しい明かりを灯した4人に話を聞いた。
もともと同胞が暮らしていた2階建て民家の借り手を探している。役立ててくれるなら自由にDIYしてくれても構わない。家賃は月3万円。
2019年、知人から空き家の紹介を受けた金潤実さん(32)。大阪朝鮮高級学校(当時)などで図工と美術の講師・美術部顧問を務める傍ら、自分自身の創作にも力を入れたいと常々考えていた金さんは、LINEグループで大阪朝鮮高級学校時代の美術部OG・OBたちに共同アトリエを開かないかと呼びかけた。…
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●アトリエトゥンInstagramアカウント→@atelier.tone
※以下、メンバーたちのコメントとInstagramのアカウントです。facebookページも公開中(「アトリエトゥン」で検索)。
金潤実さん @yunsirisiri
家や職場とは別で、作品制作のためのサードプレイスがあれば…そんな願望が叶えられそうだったのでメンバーを募りました。仲間がいれば、「今日はアトリエに行こうかな」「作ってみようかな」という気持ちがわいてくる。
私は絵画作品が制作のベースになっています。見えていると思っていても実際には見えていなかったり、逆に見えていないと思っていても実は見えていたり。そういったものの余白や不協和、人や歴史をどう見るか、そんなことを、身近なものをモチーフにしながら作品にしています。
各々の制作はもちろん、個人的にはこのアトリエを、つながりが生まれる開けた場所にしていきたいと考えています。そんな思いからみんなでオープンスタジオも企画して、地域の人や知人に活動を周知しました。これまでに数人でのクロッキー(速写)会なども開催しています。
前田香奈さん @kanamaeda_
昔は絵画制作をしていましたが、最近は写真作品や、写真と絵を組み合わせた映像作品の制作などもしています。潤実は大学で同じ学科の同級生。卒業後、展覧会やSNSでつながっていたところ、呼びかけがあってこのアトリエに参加しました。
オープンスタジオには朝鮮学校の生徒さんはじめ、いろんな方が来てくれたのですが、ここに集う人は、自分が何者かとか、政治的なことなどを「考えなきゃいけない状況に置かれている人」が多いと思います。そういったことを安心して話して過ごせたり、制作できる場所にできたらと思うし、自分自身も身を置きたいです。
また、このメンバーだからできる話、出てくる話もあると思います。私はいま、やりたいようにトゥンで制作させてもらっていますが、自分の伝えたいことを表現する技術をあげるために、例えば言葉での表現など、勉強もしなくてはと感じています。
金陽姫さん @KIM_YANGPHI
2歳くらいから絵を描くのが好きだった記憶があります。本格的に美術を学びたく、高校からは芸術系のコースがある日本の学校に進学しました。現在も絵にかかわる仕事をしています。「Devil ANTHEM.」というアイドルグループのCDジャケットに掲載されるイラストも手掛けたのですが、その広告がタワーレコード渋谷店の壁面に大きく掲示された時はとても嬉しかったですね。
自身のスタイルの関係で、現在はアトリエトゥンでの活動はしていませんが、この環境自体は素晴らしいと思うので、これからもお手伝いできることで関わっていきたいです。アトリエトゥンのロゴデザインも手がけました。地図上で見ると、ちょうどこの場所の路地の形が「ト」の字になっていたので、うまく組み合わせて面白いロゴになりました。
髙稀暎さん @____heeyoung
アボジが朝鮮学校で美術の先生をしていたので、小さな頃から絵を描くことが好きでした。大阪朝高を経て大阪芸術大学へ。外部でのグループ展に積極的に参加し、途中からは留学同の活動にのめり込みました。
卒業後は、自分の頑張りが同胞社会にダイレクトに還元される職場がいいなと思い、ミレ信用組合へ。しばらくは仕事でいっぱいいっぱいでしたが、最近ようやく制作との両立を考えられるようになってきたかもしれません。
私は人でも動物でもない生き物をよく描いています。教科書の隅っこに落書きするような、とりとめもない、手を動かして楽しいものを描く。私の作品をみている時だけは、性別や年齢、社会的な立場といったようなカテゴリを忘れてほしい。ボーっとしている瞬間って、人間みんな何者でもないじゃないですか。