vol.5 インサも感染予防も
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筆者●金美和先生(24、名古屋朝鮮初級学校 教員)
1日の良し悪しはインサ(인사=あいさつ)から始まる。ソンセンニムに会えばその場で立ち止まり、頭を下げて「アンニョンハシムニカ」。トンムに手を振りながら「アンニョン」。聞いて欲しいことがたくさんあるのか、「ソンセンニムー! 聞いてください!」とせききって話し始める子もいるが、「その前に?」と聞けば、うやうやしくインサしてくれる。
全員が最初から丁寧にあいさつをできたわけではなかった。早く遊びたくて小走りしながら「アンニョンハセヨー!」と去っていく子。恥ずかしいのか、小声でもじもじしながらする子。見知らぬ人が来たらさっと逃げてしまう子などさまざまだった。
「동방례의지국(※)」の子孫として、インサはしっかり身に着けてほしい。そう思い、まずはイメージから変えていこうと策を練った。
「会って最初に交わす言葉だから自分も相手もいい気持ちになれるようなインサをしよう! 恥ずかしがらずに進んでインサしよう! 相手より先にインサできたら1ポイント!」―。
ゲーム感覚で、気持ちのいいインサ作りをしていった。すると、「今日は20人にインサできたよ!」「やった! ソンセンニムより先にインサできた!」と楽しむようになり、朝から元気な声が学校に響くようになった。
本校では月に一回、オモニやハルモニたちによる給食の日がある。子どもが食べている姿を一目見ようとオモニたちが教室を覗くと、なにやら児童らが私のほうをチラチラと見てくる。
現在、学校では、新型コロナウイルス感染対策として昼食の時間は黙食だ。ご飯を食べている最中は静かにするよう伝えているので、「インサがしたいけど、静かにしなくてはいけない! ソンセンニム、どうしたらいいの!?」という合図を送っていたようだ。その様子に気づいた私は思わずニヤリ。インサも感染予防に関しても意識の高い1年生であった。
(※)동방례의지국~東方礼儀之国。「東方の礼節正しい国」を意味し、朝鮮半島を指す