vol.8 トンポサラン(同胞の愛情)を胸に
広告
筆者●金美蘭先生(26、和歌山朝鮮初中級学校 教員)
涼しい教室で国語(朝鮮語)の授業をしている時だった。クーラーの風を浴びながら、子どもたちは思わず喜びの声を漏らす。「아야어여…あ~시원해(気持ちいい)~」「오요우유…あ~서늘해(涼しい)~」。
同校はこれまで暑い夏を扇風機一つで乗りこえてきた。しかし昨年、創立65周年記念事業の一環としてクラウドファンディングを実施。たくさんの方々のご支援のもと、全教室にクーラーが設置された。
ある日ふと「これは誰のサラン?」と聞いてみると、「トンポサラン!」と、みんなが声を合わせて返すのだった。思わず大きな拍手をしてしまうほど、10点満点の回答。(やっぱりウリ1年生!)と感心した。
クラウドファンディングが行われたこと、たくさんの同胞や日本の方々がいつも力を注いでくれること。幼稚班の時からなんとなく知っていることだが、1年生になってからはたくさんの愛を心で感じ、何かをしてもらうだけではなく、受けた恩を返すことの大切さを教えていた。
今年の低学年の年間目標は「사랑하자!! 보답하자!!(愛そう! 恩に応えよう!)」なのだが、そこには温かいサランに喜び、感謝し、また自分たちのいろんな形のサランで恩返しをしようという意味が込められている。
「トンポサラン嬉しいね、ありがたいね」と声をかけると、「사랑하자!! 보답하자!!」を連呼し始めた子どもたち。“トンポサラン”というフレーズを聞くと毎回、「사랑하자!! 보답하자!!」節が始まるのだ(笑)。体に染みついているのだろう。
「授業中ですよ、静かに!」と言いながらも、内心とてもほっこりして、なんだか胸が熱くなった。今日もトンポサラン、チョグッサラン(祖国の愛)がたくさん詰まったウリハッキョで、元気良く「ウリ」を学ぶ1年生。立派な朝鮮人として、すくすく育っていく子どもたち。この姿をずっと見ていたくて、この姿からたくさん学び共に成長していきたくて、私は今日も教壇に立っている。