植民地支配責任の視点から見た歴史と課題 朝・日平壌宣言から20年~朝鮮と日本との関係を考える①
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2002年9月17日の朝・日平壌宣言の発表から今年で20年になる。断絶状態にある朝鮮民主主義人民共和国と日本との関係について、識者の論考、インタビューなどを通してあらためて考える。
板垣竜太●同志社大学教授
「日朝関係」には広義と狭義がある。広義の日朝関係は、日本列島と朝鮮半島、日本人とコリアンの関係全般を意味する。歴史的スパンも長く、そのなかには日本が朝鮮を不当にも植民地支配していた時代を含んでいる。狭義の日朝関係とは、日本国と朝鮮民主主義人民共和国(以下「共和国」)および両国民間の関係を意味する。これは日本で言う「戦後」、南北朝鮮で言う「解放後」の関係である。
狭義の日朝関係は広義の日朝関係を踏まえなければ論ずることはできないし、逆に広義の日朝関係も狭義の日朝関係を抜きに考えることはできない。本稿は、日朝平壌宣言二〇周年であることを念頭に、狭義の日朝関係を主に論ずるが、その際、広義の日朝関係、とりわけ植民地支配の問題に重きをおいて論ずる。
日朝の友好と国交正常化
日朝関係は、敵対よりも友好の方がよいことは言うまでもない。では日朝友好とは何なのか。私は、「友好」とはまず「非友好」を克服しようとすること、すなわち「反―非友好」であると常日頃考えている。戦争や虐殺は、「敵」とされた集団の生命を奪う最大の非友好の一つである。植民地支配もまた、民族や国を単位として主権や自己決定権を奪う非友好である。レイシズム(民族差別、人種差別)も非友好関係であることは言うまでもない。日朝友好とは、日朝間にある歴史的な、そして現在の非友好関係を克服することに他ならない。…