vol.9 司法に刻んだ、小さいが大きな「一歩」
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ウトロ放火事件で懲役4年の実刑
ウトロ放火事件の判決が、発生から一年目の8月30日、京都地裁で言い渡された。
約一時間後の記者会見。会場に詰めかけた記者を前に、ウトロ平和祈念館副館長の金秀煥(1976年生)が吐露した。
「正直、ほっとしました」。連日のフィールドワークで日に焼けた顔に緊張を滲ませて、彼は続けた。「期待以上の判決とは言えないかもしれないけど、この社会は一歩一歩前に進んでいるんだということを、住民たちに伝えられる」。
犯罪での動機の差別性は量刑に反映される。2010年以降、日本政府が人種差別撤廃委員会で公言しながらも、実際は守られていない。その対応を裁判体がとるかが焦点だった。4年の求刑は実刑で認められたが、そもそも量刑が軽すぎる。更に弁護団がポイントにした「差別」の二文字はなかった。差別禁止法がない日本の「常識」に籠城したのだ。支援者からは批判や落胆の声が噴出したし、会見で用意された京都弁護団のコメントも、激越な判決批判に終始していた。
その中でも金が、到達点から話を始めたのは、地域で重ねた出会い、思い浮かぶ顔の数々と、彼彼女らの生きられた歴史を知っていたからだ…。(続きは月刊イオ2022年10月号に掲載)
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