2世の思い、万感の出会い /同志社大学で「オモニのうた」原画展
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京都市の同志社大学寒梅館で、10月14~16日、21~23日にかけて「朴民宜の絵と尹正淑の詩 絵と詩と在日コリアン2世の女性のライフヒストリー」(主催=同実行委員会、同志社大学都市共生研究センター、同志社コリア研究センターなどが共催)が行われた。
展示会では、月刊イオで2020年に連載された「オモニのうた」(12作品)、朝鮮の昔話として日本で読み継がれてきた朴民宜さん(75)作画の『あおがえる』『さんねん峠』(文:李錦玉、1981年出版、40刷)の原画、新作「悔いる」をはじめとする尹正淑さん(76)の詩が展示され、関西地方、東京、静岡からの来館者が作品世界を楽しんでいた。朴さん、尹さんは在日朝鮮人2世で、81年に「文学教室」で出会った友人同士。
21日には、関連イベントとして、朴さんと尹さんの対談「1世の背中、2世の思い」(司会:張慧純・月刊イオ編集長)と在日朝鮮人美術を研究するZAHPA(在日コリアン美術作品保存協会)代表の白凛さんの報告が行われ、2人の創作の源泉に迫った(司会は板垣竜太・同志社大学教授)。
対談で尹さんは、30代で渡日した一世の母親のもとで慶尚道サトゥリ(方言)を聞きながら育ったこと、幼い頃に朝鮮人ということを恥じた記憶やキムジャン(キムチ漬け)の思い出、わが子を朝鮮学校に送った時期の悲喜こもごもを伝えながら、「互いに交わることが大切。コリアンがコリアンとして尊重される社会を望みます」と願いを伝えた。朴さんは、育児と介護を続けながら、ときに苦しみながら『あおがえる』『さんねん峠』の挿絵を手掛けた思い出、一世の義父と一人息子が過ごした釣りの時間、同じく介護と育児を抱えた友人の尹さんと互いに共鳴しあい絵を描いてきた道のりを語った。
展示会では、1980年代から大阪市内の民族学級で使用されてきた教材「サラム」シリーズ(大阪市外国人教育協議会編著)も展示され、「サラム」の挿絵を担当してきた朴さんに会いに大阪から訪れた日本学校教員や元児童たちの姿もあった。日本学校に通うコリアルーツの子どもたちや先生方にとっても朴さんの絵は数々の思い出が詰まっているからだ。
質疑応答で皇甫康子さん(65)は、「大阪の学校現場で『さんねん峠』を教材にしてきました。すばらしい絵や詩が『私たちの財産だ』という意識を持てないでいましたが、今日お二人にお会いし、在日朝鮮人の女として生まれてよかった、すばらしい先輩たちだと感じた。もっともっと新しい作品が見たいし、大阪で展覧会をしたい」と語っていた。