【特集】在日3代のものがたり
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私たち同胞コミュニティは、人と心をつなぎ、世代をつないだ、たくさんの物語にあふれています。本特集では、「誇り」「記憶」「地域」「志」…。在日1世から3世、2世から4世にわたる家族史、地域史を集めました。あなたは何を伝えたいですか?-
父と子で ウリハッキョ教育会会長
民族教育を守り、同胞社会のアドバンテージを
①誇りを継ぐ
趙陽済さん、趙寿來さん
趙陽済さん(79)は40代のころ地元・兵庫県姫路市で建設業を営みながら、総聯飾磨支部(現在の姫路西支部)飾磨西分会の分会長を担っていた。熱意がピカイチで同胞たちの信頼も厚かった。
「分会長を2、3年したころ、西播ハッキョの教育会会長になってくれないかと打診があった。とんでもない話だった」(陽済さん)
それもそのはずだった。
7人きょうだいの4番目に生まれた陽済さん。16歳のとき、先に結婚した2人の姉を除いて、一家全員が祖国・朝鮮に帰国した。それから一人暮らしをし、あらゆる職場で働きながら生計を立てていたという。「学もない自分が教育畑で働くなんて」――それでも分会長として築いた信頼は、どんな学びやキャリアにも代えられなかった。当時学校教育会の副会長をはじめ周りの仲間たちに背中を押され、1992年、21代目の西播朝鮮初中級学校(以下、西播初中)教育会会長に就任。47歳のときだった。…
“「自然な流れ」、簡単なことちゃう”
トンネのぬくもりを継いで
②地域を継ぐ
女性同盟大阪・生野西支部北鶴橋分会
同胞たちの生活拠点―分会(분회、プネ)。北海道から九州まで、日本各地の同胞たちは今も昔も、複雑多難な日本社会の中でともに集い、手を取り合って、分会や支部、本部を築き、その生を繋いできた。特に同胞数が多い大阪の中でも屈指の「同胞人口密度」を誇る生野地域。女性同盟生野西支部北鶴橋分会の管轄エリアには30軒ほどの同胞宅が密集している。先代から後代へ、分会長のバトンは代々引き継がれ、今もその伝統が守られている。
オモニたちに分会長を引き継げ言われて断れへんくて(笑)。きっといつの時代もそうね」
そう語るのは金利善さん(63)。2年前まで20年近く、女性同盟北鶴橋分会を率いてきた。
「ここのトンネで生まれ、ここのトンネで育った」と金さん。青年時代は生野西支部で在日本朝鮮青年同盟の活動に情熱を注いだ。「あれは確か夏、朝青活動の一環でハッキョに寝泊まりしながら活動していたとき、女性同盟分会ごとに当番で毎日そうめんやいろんな食事を作ってくれたっけ」。心に自然に沁み込んだトンネのオモニたちの姿。さらにはシオモニ(義母)は副分会長、シアボジ(義父)も総聯分会長を担っていた。「断れへん」理由は明確だった。…
22歳で永訣したオンニの言葉
③記憶を継ぐ
裵永愛さん
1948年、49年の朝鮮人学校閉鎖令により、日本各地の朝鮮学校は大打撃を受けた。50年12月には愛知県の朝連守山初等学院が閉鎖。この学校に通っていた裵永愛さん(80、愛知県在住)は、学校を守るための闘いに母と2人の姉とともに参加した。80歳を迎えた今も、学校を守ろうと自身の体験を語り続けている。
当時8歳だった裵永愛さんは、自身が通っていた朝連守山初等学院(46年2月創立)が閉鎖された前後のことをよく覚えている。
大人たちがコソコソと話しをしていました。兵庫では兵庫県庁に数千人の同胞が集まり、たくさんの人が捕まりケガをした、その後大阪では1万5000人が府庁に集まり、学校を閉鎖しようとする警官たちと闘った、16歳の金太一少年が銃弾に撃たれたと…。
守山初等学院が閉鎖された1950年の6月には故郷で朝鮮戦争が起きました。米国を筆頭に16の国が朝鮮を狙っている―。7歳の私は戦争が何かは知らなかったけれど、あんなにも小さなウリナラをたくさんの国が戦争に追い込んでいることに憤りの気持ちがわいてきました。…
アボジのようになりたい―
母校と父とサッカーと
④志を継ぐ
徐仁柱さん
先日、家族のLINEグループに1枚の写真が投稿されました。私の母校である伊丹朝鮮初級学校でサッカー教室を開いているアボジ(父、徐聖昌、52)とアボジの教え子、その保護者たちがグラウンドに集まった写真。久しぶりにボールを蹴ろうと、かつての仲間たちが集まったのだと思いました。それから数日後、母と電話をした時に聞いてみました。「写真見たよ。みんな楽しそうだね。何の集まりだったの?」と。母の口からは、予想外の答えが返ってきました。「あれは卒業生の保護者たちがアッパのために開いた『お疲れさま会』だよ」。…
エッセイ 継ぐもの
恩師から教え子へ、師匠から弟子へ、同じトンネに暮らす1世から2世、3世へ―。受け継がれてきた「モノ」にまつわる思い出を綴ってもらいました。
1世・李光鉉先生の文学授業
梁清姫さん(61、神奈川県在住)
アジメたちの面影と味を次世代に
朴美樹さん(52、愛媛県在住)
師匠から受け継いだ虫取り網
朴鎮亨さん(24、福岡県在住)
(続きは月刊イオ2023年7月号に掲載されています)