【イオニュースPICK UP】映像で訴える「藤岡事件」 関東大震災朝鮮人虐殺100年、群馬の追悼実行委が主催
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関東大震災朝鮮人虐殺から100年の今年、日本各地で追悼行事や関連イベントが行われている。藤岡市総合学習センター(群馬県)では、「その時、藤岡で何が起きた!~映像で訴える~」が8月12日に行われた。映像を通して、藤岡事件について知るきっかけにしようと「関東大震災100年・朝鮮人犠牲者慰霊諸行事実行委員会」(以下、実行委員会)が主催し、藤岡市民や県下の日本市民、在日同胞ら95人が集まった。
県下では、震災発生後に県や警察当局による「不逞鮮人」への警戒により自警団が結成され、1923年9月5日から6日にかけて藤岡警察署内で「保護」されていた17人の朝鮮人が自警団をはじめ民衆の手によって殺された。事件は、「藤岡事件」として知られている。
この日のイベントでは、藤岡市出身の小林里樹さん(23)が武蔵大学に在学中の昨年、卒業制作として作成した藤岡事件に関する20分弱の映像視聴及び講演が行われた。
「慰霊と反省~藤岡事件から99年~」と題した映像作品は、藤岡事件の「加害者はわたしたちと何ら変わらない当時の一般市民だった」「関東大震災から100年が経とうとしている今、もう一度考えていきたい」という小林さんのナレーションで始まる。震災後、いかにデマが広まり、県下で自警団が結成されたのか、藤岡事件とはどのような事件だったのか、どのような背景があったのかについて事件を語り継ぐ「語り部」たちを小林さんが直接訪ねたインタビューを中心に構成されている。
小林さんは小学生の頃に祖父から、藤岡警察署で人が殺されたことを聞かされていたが、事件については詳しく知らなかった。大学に上がり、ゼミの先生から藤岡で朝鮮人が殺された藤岡事件について聞き、幼い頃の話と繋がった。そして、卒業制作にあたり、地元で起こった藤岡事件について自ら学んで考えた記録を残そうという目的で制作した。
講演で小林さんは「慰霊と反省」というタイトルについて、「慰霊祭などの行事だけではなく、藤岡事件について語り継ぐこと、学ぶことも、慰霊につながる」とし、「単なる謝罪だけではなく、事件を繰り返さないために、現代において私たちは何をしなくてはいけないのかを考えることも、反省に当たる」と続けた。
また、映像を制作するために語り部から話を聞く過程で「気づき」を得ることができたと話す。「私自身も、藤岡事件と聞くと、やはり昔のことで、現代社会において虐殺なんて簡単に起こるはずがないと思っていたが、話を聞く過程で、もっと身近な出来事であると感じた」(小林さん)。
続けて、実行委員会の委員長を務める、藤岡事件を語り継ぐ市民の会の秋山博事務局長が、「100年前、藤岡で民衆によって17人の朝鮮人が虐殺された」と題し講演を行った。秋山さんは、「1910年に日本は朝鮮を植民地化し、震災当時も日本人の中に朝鮮人に対する差別意識があった」とし、虐殺から「100年経っても、国による反省がなく、犠牲者の供養もなされていない。平和へまい進するためにも、私たちは次の世代に藤岡事件を語り継いでいく役目がある」とのべた。
この日前橋市から来た竹村朗さん(64)は、藤岡事件について数年前にインターネットで調べて知ったという。竹村さんは、「背景を知ることで事件を立体的に理解することができた。朝鮮人に対する差別と偏見は今でもなくなっていない。個人的にできることとして、親族が集まる時に今日のイベントや藤岡事件について話し、差別と偏見をなくして平和な社会の実現に貢献していかなければいけないと伝えていきたい」と話した。
実行委員会は、関東大震災朝鮮人虐殺から100年という節目に、改めて、17人の犠牲者に哀悼の意を捧げ、「二度とこのような過ちを繰り返さないため」「差別やヘイトをなくし、平和な共生社会をめざすことの大切さを訴え」るという趣旨で、6月に結成された。今後、9月9日に成道寺で慰霊祭、10月21日に講演と映画鑑賞会を予定している。
(文・写真:康哲誠)
詳細は以下から。
●関東大震災朝鮮人犠牲者100周年慰霊祭
日時: 9月9日 (土) 10:00~12:00
場所: 藤岡市成道寺(藤岡市藤岡396-1、JR八高線群馬藤岡駅から徒歩5分)※駐車場有
参加費: 1000円
内容: 通常の慰霊祭次第のほか、 下記内容を加えての慰霊祭実施
本堂にて、 韓国からの遺族の弔辞 権在益さん
境内にて、鎮魂、慰霊の舞の実演 曺和仙さん、慰霊の歌 李政美さん
●今、改めて問う! 関東大震災朝鮮人虐殺事件「講演と映画の集い」
日時: 10月21日 (土) 14:00~
会場: 群馬県教育会館5階ホール(前橋市大手町3-1-10、JR前橋駅、新前橋駅からバス、「県庁前」徒歩3分) ※駐車場が狭いため、近くの駐車場をご利用ください。
参加費: 500円
内容: 呉充功監督による講演と映画上映(『払い下げられた朝鮮人』)
問合せ: 関東大震災100年・朝鮮人犠牲者慰霊諸行事実行委員会 (担当: 宮川 090-3106-4876)