【イオニュースPICK UP】歴史の否定、忘却に抗い/新宿で群馬の森朝鮮人追悼碑撤去反対デモ
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新たな闘いへの連帯
リレートークの始めに、主催者の一人である松本浩美さん(フリーライター)が追悼碑の建立の経緯から、11日に「記憶、反省そして友好」の追悼碑を守る会(以下、守る会)が新たに起こした裁判について説明した。
松本さんは、「群馬の森」追悼碑の撤去は全国にある加害の歴史を知る追悼碑にも影響が及ぶことだと強調。さらに、追悼碑撤去の動きはヘイトスピーチ、歴史の改ざんと共に行われてきたとし、「ヘイトスピーチが横行し、マイノリティを傷つける社会に私たちは住みたくない」と訴え、守る会の新たな闘いへの連帯を表明した。
「これは忘却に対して抗う行動だ」とマイクを握ったのは川名真理さん(沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志の呼びかけ人)。川名さんは、「私たちは過去に植民地支配をした国の子孫だ。その歴史をきちんと謝らずに、うやむやにして忘れ去ろうとしている政権や行政があり、その一例が群馬の森の朝鮮人犠牲者追悼碑の撤去だ」と訴えた。
作家の中沢けいさんは、「朝鮮人強制労働という政治的でないものを『政治的』だと無理やり言っているが、建立した時は県議会にて全会派が賛成している」と話す。また、「ほんの一握りの極端な主張をする人々に行政が乗っかってどうするのか。近隣の国々と新しい関係を結ぶ時代になっている中で、もし追悼碑を群馬県が撤去すれば大変なことになる」と警鐘を鳴らした。
60代の在日コリアン男性は、「政府の歴史否定が在日コリアンの存在を揺るがし、ヘイトスピーチを呼ぶ。そして、そのヘイトスピーチが発展するとヘイトクライムも起きる」と強調。「追悼碑は何も変わっていない、変わったのは追悼碑を取り巻く社会だ」としながら「追悼碑が攻撃されるようになったら、やばいと思ってください。追悼碑は危機を知らせる『アラーム』だ」と言葉に力を込めた。
明確な差別扇動に抗い
抗議デモの向かい側にて、追悼碑撤去を訴える排外主義者ら数名が集まった。これに対するカウンター活動も行われた。排外主義者らは追悼碑の撤去を訴え支離滅裂なことばを繰り返すのに飽き足らず、在日朝鮮人に対する明らかなヘイトスピーチも発した。以下、その一部だ。
おい、腐れ朝鮮人
生まれながらの犯罪者、朝鮮人
約束を守れない朝鮮人は、約束を守れない北朝鮮に帰れ
こいつら朝鮮人の親は日本に密航してきた不法侵入者
約束も法律も守れない犯罪者朝鮮人を叩き出せ
これらの言葉はすべて「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取り組みの推進に関する法律」、通称「ヘイトスピーチ解消法」の第2条における「本邦外出身者に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的」で行われた「不当な差別的言動」に該当するだろう。先日12日には、横浜地裁川崎支部にて「祖国に帰れ」というネット上のヘイトスピーチが「不当な差別的言動」にあたるとして、100万円という高額の慰謝料が認められている。
2012年に碑文が「反日的」だと抗議、街宣をした排外主義団体、それに追従する形で碑を認めない判断を下した県行政、行政に忖度した形で「強制連行」という発言によって碑の「中立性が喪失」したという判決を下した司法。この三権分立が揺らいでいる事実についても重く受け止めるべきではないか。
市民らはこの日、改めて追悼碑の撤去に反対し歴史の否定、ヘイトスピーチに抗うという強い意志を言葉と行動で示した。(文・写真:康哲誠)
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